転職やキャリアアップを目指す際に、SIer企業を検討しているものの、その実態や将来について課題や不安を抱えている人も多いことでしょう。
この記事では、独立系を含むSIer企業の分類と年収・将来性や仕事内容などについて詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、SIer企業の実態をしっかりと把握し、自身をもって次のステップへと進むことができるでしょう。
SIer企業の3つの分類

SIer企業とは、SI(システムインテグレーション)を提供する企業を指します。
多くの企業がそれぞれに専用の情報システムを保持しており、こうしたITシステムに関する企画・導入から開発・保守運用まで幅広く手掛けるのがSIer企業です。
SIer企業には、大別してメーカー系、ユーザー系、独立系の3つが挙げられます。
*その他、外資系、コンサル系という分類もありますが、この記事では上記3種類に特化して解説していきます。
メーカー系SIer
メーカー系のSIer企業とは、パソコンをはじめとする、IT系のハードウェア機器の製造メーカーの情報システム事業部門が、親会社から独立・分社した企業を指します。
このため、親会社のハードウェアと組み合わせたソリューション提案や、システム開発が主な業務概要となります。
それぞれのユーザーにおける課題に対して、ハードウェアからソフトウェアまで、トータルサポートが可能となる強みがあります。
ユーザー系SIer
ユーザー系のSIer企業とは、親会社が商社や金融機関、製造系大企業など、様々な業種のIT事業部門からなる企業を指します。
親会社やグループ会社など、特定の業界や、関連企業向けのソリューション提案や、システム開発などが主なフィールドとなります。
クライアントとなる業界や企業は絞られますが、ユーザーに近い立場と役割を活かし、課題解決に取り組めるメリットがあります。
独立系SIer
独立系のSIer企業とは、親会社を持たず、独自経営でシステム開発をしている企業を指します。
ハードウェアメーカーや、商社・金融、また製造系など、様々な分野におけるシステム事業部の社員が起業して立ち上げた企業が多い状況です。
あらゆる業界や企業が対象となるため、メーカー系やユーザー系のように縛りのないシステム化提案が実施できる強みを有しています。
独立系SIerの年収・将来性とは?

各種の調査データなどを総合的に勘案すると、SIer企業の平均年収は概ね650万円程度となっています。
日本全体での平均年収が420万円程度なので、SIer企業は業界全体として高い年収を得ているといえます。
そして、独立系SIer企業の年収と将来性については、メーカー系、ユーザー系と比較して遜色なく、ほぼ同等のレベルにあると考えてよいでしょう。
平均年収は650万円
上述したように、独立系SIer企業全体の平均年収は概ね650万円程度と推測されます。
当然ながら、所属企業によって年収には差異がありますが、ここでは、民間企業調べによる独立系SIer企業の上位各社の年収をみていきます。
1位:オービック(901万円)
2位:日本ユニシス(825万円)
3位:JBCCホールディングス(812万円)
4位:大塚商会(807万円)
5位:SCSK(725万円)
独立系SIerの平均年収の1位はオービックで、901万円となっています。
ユーザー系SIerやメーカー系SIerと比較すると、独立系SIerの売上高は低めですが、平均年収ではユーザー系SIerなどと遜色ありません。
将来性
総論として、独立系SIer企業を含むSIer企業全体として、その存在が不要になる事はありません。
主な理由として、世の中のIT化が日進月歩で進展しており、これに伴って、ITエンジニアの不足が今後も深刻な問題となる状況が想定されることなどが挙げられます。
その一方、各企業の社内ITシステムはどんどんWebベースに置き換わってきているため、SIer企業も事業の軸足をWeb開発にシフトする必要があります。
事実、大手SIer企業各社は、当該システムをWebやスマートフォン用のアプリへと変化させ、対応しています。
このため、ITエンジニアとしては、古いSIerから、Web系企業やWeb系にシフトしたSIerへと変革していくことになるでしょう。
独立系SIer企業の仕事内容とは

独立系SIer企業の主な仕事内容は、自らが各種の案件を受注してシステムの開発を行うため、まずは案件受注に向けた営業活動を実施します。
直接クライアント企業とと打合わせを実施する中で、自社で該当する製品を選定したり、使用言語を選択することができるため、自由度は高い状況です。
また、各案件も自社で選定するため、親会社の縛りもなく、興味深い案件も多く発掘することが可能となります。
受注後は、システム開発における要件定義、設計、開発、運用と進んでいきます。
設計工程には上流工程と下流工程がありますが、SI業界では、独立系を含め、多くの場合、大手SIerが上流工程を担当し、その後の下流工程を中小SIerに外注するケースが多いため、企業規模によって仕事内容が異なってきます。
営業→仕事の受注
まず、仕事を獲得するためには営業活動からスタートします。
SIer企業における営業活動は、クライアント企業に対するヒアリングを実施し、企業の課題や悩みを丁寧に掘り下げて、ITソリューションで解決できる方策を探ります。
売上向上や業務の効率化といった、漠然とした希望に対して、売上向上のために何が必要かとなるのか、業務を妨げている要因は、など、具体的に聞き出し、合致する提案書を作成します。
その後、過去の事例や検証データに基づいた内容を評価されれば、受注へと漕ぎ着けることができます。
システムの企画
仕事を受注したら、具体的なシステム企画を実施し、クライアント企業がシステム運用した際のシミュレーションや、オプション提案などを実施します。
システムに矛盾が生じるような提案や、開発に膨大な時間がかかる企画は避け、商品理解とクライアントの理解が十分に共有されて、初めて企画が成立します。
システムの要件定義
要件定義とは、クライアント企業が、どのような目的で当該システムを必要としているかについてヒアリングを行い、システムに必要な機能や、性能などを定義する工程です。
システム化に必要な対象業務を洗い出し、業務処理の手順やシステムの操作、また入出力要件などを整理して、要件定義書としてとりまとめていきます。
システム開発を行う上で非常に重要なフェーズであり、経験豊富なSEや、ITコンサルタントなどが主に担当します。
システムの設計/開発
要件定義後、システムの設計・開発フェーズへと進みます。
設計は、要件定義書に基づきシステムの設計を行う工程です。
設計といっても幅広い内容があり、ハードウェアの設計やデータベース設計、また業務設計やプログラミング設計(詳細設計)など、さまざまな設計を行います。主にSEが担当します。
続いて開発では、設計工程で作成した設計書に基づきプログラミングを行います。
コーディング基準に従って、採用したプログラミング言語でコードを書いていきます。
コードを書いた後は、コードレビューを行い、必要に応じてデバッグを行います。
主にプログラマーが担当する工程となりますが、企業によっては、設計者が開発も兼ねて担当する場合があります。
システムの保守/運用
システムの保守・運用フェーズでは、システム導入後にクライアント企業がが問題なく当該システムを利用できるよう、稼働状況の監視や、利用状況に応じたチューニングを実施します。
運用時にシステムに何らかの問題が生じた場合には、ただちに応急対応を行い、その後の恒久対応も実施します。
システムのリリース直後は開発会社が担当するケースが多い状況ですが、安定稼動後は、BPO企業に保守・運用業務を委ねる場合も多くあります。
独立系Sier企業の仕事の特徴

SIer企業の中でも、独立系SIre企業にみられる仕事の特徴があります。
以下に、その主な項目について解説していきます。
親会社に縛られるなどの制限がなく自由度が高い
独立系SIer企業最大の特徴は、何といっても親会社が存在しない点にあります。
親会社が存在しないため、親会社に縛られるなどの制限がなく、柔軟な活動が可能となります。
これに対して、大規模なグループ企業の一部であるメーカー系SIerやユーザー系SIer企業は、細かく定められた規約や、開発規定を遵守して活動を余儀なくされるケースがあります。
このため、多少の効率の悪さを受け入れながら業務を遂行する場合も多数生じます。
しかし、独立系SIer企業の場合はそうした制約がありません。
システム開発におけるソフトウェア製品なども自由に選定できるため、開発時にも自由度が高いです。
また、親会社が存在しないため、広範なクライアント企業の業務・システム開発が可能となります。
このように、独立系SIer企業は、親会社を持たないからこそ実現できる多くのメリットを持っています。
多様な業種へ参画が可能
独立系のSIer企業は、金融や官公庁、また公共、流通などを含め、多種多様な業種への事業参画が可能となり、多様な分野で仕事ができます。
これに対して、メーカー系やユーザー系のSIer企業は、親会社からの仕事請負いが多いため、どうしても仕事に偏りが出て、自由な仕事の展開が難しくなります。
多くの独立系SIer企業は、保守・運用系の仕事よりも、むしろ開発系プロジェクトを売上の大きな柱としています。
開発プロジェクトを数多く経験することで、要件定義、設計、開発のスキルを磨くことができるメリットもあります。
業務内容が幅広い
独立系SIer企業は、業務内容が幅広いことも大きな特徴として挙げられます。
ユーザー系SIerに多くみられるような、コンサルティングを中心とする、いわゆる上流工程中心の業務内容だけを担当するだけではありません。
独立系SIer企業の多くは、プログラミングや進捗管理、また運用後のサポート業務も兼任しているところが多いため、コンサルティングやヒアリング能力だけではなく、プログラミング能力も同時に身につけられる環境にあります。
仕事の内容や範囲、また必要とされる知識はプロジェクトごとに異なり、また多岐にわたっているため、独立系SIer企業では常に能力の高い人材を求めています。
そのため、経験者を大量採用する企業が多い特徴があります。
高い営業努力が必要
独立系SIer企業は、親会社から定常的に仕事が受注できるメーカー系やユーザー系SIer企業と異なり、非常に高い営業努力が必要になります。
大手企業を親会社に持つメーカー系やユーザー系SIe企業は、仕事の受注に当たっても、親会社が配慮して仕事を回してくれる場合もありますが、母体となる企業を持たない独立系SIerでは、そうした恩恵はありません。
このため、安定性という観点からは、どうしても他の2つのタイプに比べると劣っています。
独立系SIer企業では、営業努力の結果としての自社業績が、そのまま経営状況に直結する現状があります。
代表的な独立SIerの大手企業を紹介

平均年収の項でも触れましたが、数多くある独立系SIerの中でも、代表的な企業とされるものを以下に挙げて解説します。
大塚商会

オフィス周りのソリューション展開を中心として活動しています。
テレビCMで「たのめーる」を大々的に行っているので、知名度も高いです。
オフィス周りのソリューション分野の1つとして、システム構築を企業に提供していますが、事業のドメインではないので、SIerでシステムエンジニアとして働きたい人には若干のギャップもあります。
富士ソフト

グループ全体で1万人を超える技術者を擁し、1987年12月に株式上場を果たしています。
銀行・証券・生損保などの金融系や、製造、医療、また文教などの業務系システム開発と構築を行っています。
近年では、筆ぐるめ、PALROや、moreNOTE、みらいスクールステーションなど、主要プロダクトサービスも展開する一方、通信機器の製造も手がけています。
ABC

流通業におけるコンビニエンスシステムの開発からスタートし、その後製造・通信・ECをはじめ、幅広い分野に拡大して、着実に実績を積み上げています。
SIの現場でクライアント企業に対する満足最大化をモットーとしています。
ますます高度化・多様化する情報化のニーズに応えるため、パッケージ製品の導入/カスタマイズや、運用管理ツール導入、また付加価値の高いソリューションを展開しています。
SCSK

元々は、総合商社である住友商事の情報システム部門が独立して発足しました。
それ以来、特定のハードウェアや、プログラミング言語などに縛られない、中立的なソフトウェア開発に実績を誇り、安定した収益力と成長性を保っています。
2011年10月1日にCSKを吸収合併し、旧・住商情報システム株式会社(SCS)から、SCSK株式会社に商号を変更しました。
オービック

1968年設立の、歴史ある独立系SIer企業です。
独自のサービスに大きな強みを持ち、クライアント企業の業務システムを、独自のクラウド上で稼働させる仕組みを有しています。
営業から開発、運用、またサポートまで一貫して請け負っており、独立系SIerとして、自社内でシステム関連業務を完結させている点が大きな特徴です。
トランスコスモス

クライアント企業に対し、多様なITアウトソーシングサービス(例:コンタクトセンターサービス、デジタルマーケティングサービス、またECやBPO、更にはデータ分析等)を展開しています。
全国各地にオペレーション拠点など計67拠点を展開し、さらに海外では、中国や韓国、ASEAN各国、またアメリカやヨーロッパ各国など、合計101拠点を所有し運営しています。
まとめ ~独立系Sierって何?仕事内容・将来性から大手企業について詳しく解説!~
SIer企業の主な3分類と、それぞれの業務領域や特徴などについて解説しました。
中でも、独立系SIer企業を中心に詳しくみてきましたが、無数に存在するSIerの中から、自分の理想や業務イメージに近い企業を探すためには、今回取り上げたような各企業の分類や業務領域から、しっかりと整理・分析することをお奨めします。
また、必要に応じて、実際にSIer企業で働いている担当者の生の声を聞いて、企業の理解を深める努力も必要です。