【群馬大学 加藤教授】未来を切り拓くAI|AI技術の社会変革力とその未来へのビジョン

【群馬大学 加藤教授】未来を切り拓くAI|AI技術の社会変革力とその未来へのビジョン

取材にご協力頂いた方

群馬大学 情報学部
加藤毅 教授

群馬大学 加藤教授

略歴
平成17年~ 東京大学大学院・新領域創成科学研究科, 研究拠点形成特任教員
平成20年~ お茶の水女子大学生命情報学教育研究センター准教授
平成22年~ 群馬大学大学院工学研究科情報工学専攻准教授
令和3年~ 群馬大学情報学部教授

AI技術の急速な発展が社会に与える影響について

加藤教授-質問①

AI技術の急速な発展が社会に与える影響について、どのように考えますか? AI技術が人間の生活や仕事にもたらすポジティブな変化と、それに伴う課題についての見解を伺いたいです。
インタビュアー
インタビュアー

「加藤教授による解説」

現在、日本は少子高齢化社会に突入し、かつ生産人口減少のリスクに直面しています。

日本に限らず、欧州など多くの国家は農業中心の社会構造から工業中心の社会に移行したときに人口が大幅に増加しました。

生活水準が向上するため多くの人々が長寿を全うする一方、出生率は少しずつ低下していくため生産人口の割合が減少していきます。

減少していく生産人口で社会を維持していくには自動化と効率化が不可欠です。

AIは自動化と効率化のための重要な手段として期待されており、各国でAIの活用による製造分野や物流分野の強化が推進されています。

製造分野では、生産ロボットの導入や商品の検査のみならず生産プロセスの最適化や利益の予測などに用いられます。

物流分野は宅配の需要増加とドライバーの高齢化に悩まされており、自動運転トラックへの期待は大きくなっています。

移動サービスにおいて海外で、タクシーの自動運転が導入されているほか日本でも自動運転バスの社会実装に向けた実証実験が盛んに実施されています。

こういった社会の変革には負の側面もあります。
技術発展により省力化が実現するとその種の労働に対する需要が減少してしまうことです。

過去には、電話を掛けるとき電話交換手が回線を接続する必要がありましたが,機械化により消滅した歴史があります。

現在はAIの発展により将来80%の職業が影響を受け、数多くの職業が消滅すると言われています。
AI導入に成功した職種から大量解雇が生じる恐れがあるため、人材のスムーズな移動が課題となるでしょう。

群馬大学 加藤教授

異分野へのAI応用において最も期待される分野

加藤教授-質問②

異分野へのAI応用において、最も期待される分野はどこだと思いますか? 加藤教授が研究を進める中で、AI技術の応用が特に有効だと感じた分野について教えてください。
インタビュアー
インタビュアー

「加藤教授による解説」

先の質問への回答において、製造分野・物流分野・移動サービスなどの自動化に言及しましたが、そのほかに革新的な影響を受けるのは医療だと思います。

これまでは専門知識を持った専門医が専門知識と実地経験をもとに個別に診断をしてきました。
すると、専門医の知識と判断力によって診断結果にぶれが生じたりする恐れがありました。

CT画像やMRI画像などの医療画像からの診断においても、放射線診断医の技量と疲労度合への依存は捨てきれず、見落としなどのリスクがぬぐいきれませんでした。

このような診断を自動化することで判断ミスの危険が緩和されることが期待されています。

AIと機械学習技術の発展が今後のIT業界に与える影響

加藤教授-質問③

AIと機械学習技術の発展が、今後のIT業界にどのような新たなトレンドを生み出すと予想しますか? 技術の進化が業界の将来像にどのように影響を与えるかについての教授の考えを聞きたいです。
インタビュアー
インタビュアー

「加藤教授による解説」

AIによる解析に最も重要な要素はデータです。
現在、あらゆるデータの収集と統合が進んでおり、より高精度な予測と解析ができるようになると期待されています。

より多くのデータを使うことにで、今まで画一的なサービスだったものが個人個人に異なるサービスを提供できるようになります。

例えば、医療の分野では患者の遺伝情報や生体データをもとに薬剤の選択や治療方法を最適化することができます。

より多くの医療データをAIの学習に組み入れることによって、創薬における薬剤候補の特定の高精度化が実現します。

ディープラーニング技術の安定化に向けた技術的な課題

加藤教授-質問④

ディープラーニング技術の安定化に向けた研究において、最大の課題は何だと思いますか? ディープラーニングの学習の安定性を高めるために、現在直面している技術的な難問について教えてください。
インタビュアー
インタビュアー

「加藤教授による解説」

深層学習は大きな発展を遂げたとはいえ,AIの学習にはまだ多くの課題が残っています。
AIはニューラルネットワークと呼ばれるアルゴリズムを使って学習されます。

ニューラルネットワークの構造は、タスクの違い、データセットの規模と質によって最適なものが異なります。また、AIの学習はなるべく間違えないようなニューラルネットワークのパラメータの値を探索することで行われます。

単純に探索してしまうと学習に使っているデータは正確に予測できるようになっても、学習に使っていないデータはかえって予測できなくなるといった現象も起きます。

この探索作業には技術者によるチューニングが必要となっており、技術的な課題として残されています。

群馬大学 加藤教授

AI技術の教育への応用と可能性及び実現に向けた課題

加藤教授-質問⑤

AI技術の教育への応用について、どのような可能性を見ていますか? AIを活用した教育方法やツールが学習効果を高めるためにどのように役立つか、またその実現に向けた課題について教授の意見を伺いたいです。
インタビュアー
インタビュアー

「加藤教授による解説」

教育には教育者が生徒をよく観察して適切な指導をしていく必要がありますが、それは教育者に大きな負担をかけます。

AIに個別最適化させることにより、生徒の能力、理解度の把握、これに基づく分析が瞬時に行うことができるようになり、実時間フィードバックが可能になります。

生徒の現状に合わせた難易度の問題、間違いやすい問題の呈示ができ正確な成績評価が行えるようになります。
教育分野におけるAIの導入が進むにつれ、プライバシーとセキュリティのリスクも増加します。

生徒の詳細な能力、理解度は高度な個人情報となるのでデータ保護のためのセキュリティ対策は万全にしておく必要があり、インフラの整備も欠かせません。

公的教育機関においては公平で平等な教育の確保が求められますが、教育機関によってインフラの整備が不完全になれば公平性が損なわれてしまいます。