1. プログラムを書く経験はやはり中学生、高校生など早い段階からやっていないと優れたエンジニアになるには難しいのでしょうか?これからはじめてプログラムを書いてみようと思っている大学生の方に何かアドバイスを頂ければと思います。
プログラミングを始めるのに、大学生だから遅すぎるということは全くありません。社会に出る前にITスキルを身につけるのは十分価値があることです。理科系・文科系の区別も関係ありません。
実はプログラミングで大活躍する方々には共通している資質があります。それは論理的な思考力であったり、課題解決能力であったり、チームを率いるリーダーシップなどの「人間力」とも言える部分です。加えてコンピュータや新しい技術が大好きなこと。これらを備えている方であれば、プログラミング力は急速に身に付きます。
だから焦る必要はありません。むしろどのような業界に行ったとしても通用する基礎的な「人間力」を是非今のうちに磨いて頂きたいと思います。これらの力は、例えば皆さんの日常のアルバイトや文化祭の運営、サークル活動でも工夫次第で伸ばすことができます。もっと効率よくやるにはどうしたいいか、より多くの面白い仲間を巻き込み、力を発揮してもらうにはどうしたらいいか等。課題を自ら見つけ、解決する力はいつ、どんなところであっても磨くことができます。
実際ウルシステムズでも、プログラミング経験がまったくなかった文学部の女性が昨年新卒で入社し、すでにバリバリに業務要件定義をこなしてます。素養がある方は本当に急速に伸びるので、嬉しいですね。
2. ウルシステムズは最先端の技術者が集い刺激的な仕事をしているイメージがありますが、IT技術者として心がけるべきことがあれば教えて下さい。
IT技術は日進月歩の世界です。IT技術者は、世の中に大きな変革をもたらすことができる、夢のある職業です。だからこそ競争も激しく、常に切磋琢磨していないと置いてけぼりになってしまいます。裏返せば、常に努力を怠らず成長していければ、若手でも十分リーダーになれる可能性を秘めている、そんな業界です。皆さんの参考までに、私たちが心がけている3つのことをお話しましょう。
1つ目はお客様との信頼関係構築です。常にお客様から名指しされる技術屋でありたい。そのためには個別のスキルを身につけるだけでは足りません。自分ではなくプロジェクトの成功のために、ブレない信念で仕事をすることはとても大切です。打算ではない、本音の人間関係をお客様と築くこと。そのための高いコミュニケーション能力と誠実さは常に磨き続けるべきものです。
2つ目は、最先端に居続ける、ということです。技術の進歩は早く、すぐに陳腐化していきます。ある特定技術ばかりを盲目的に5年もやってしまうと、気づいたら世の中に置き去りにされていることでしょう。だから最先端技術に常に触れていることはとても重要なのです。そういう環境を会社としても意識的に作るようにしています。技術者として大事なのは、とにかく業界の第一人者同士の直接のネットワークを築くこと。間接的な情報ではなく、実際にその技術の大家である方と話すことです。ウルシステムズが多くの書籍を翻訳したり執筆したりしているのは、そのためです。
3つ目は、お互いに一緒に仕事をしてよかったと思える仲間であること、です。私たちの仕事はチームワークが大切です。お互いプロとして切磋琢磨しつつ、プロジェクトの成功を目指して助け合える仲間は本当に頼りになります。私自身も現場のメンバーに頼りますし、逆に安心して頼ってもらえる、そんな仲間でありたいと思っています。
3. 日本のIT業界の状況とウルシステムズではどのような取り組みをなされているのか教えて頂けますか?
日本のIT業界は大きな変革期にあります。これまでは大手のシステムインテグレータやメーカを中心に、どんどん下に仕事を投げていく、多重請け負い構造が存在していました。その結果、個別作業の分業化が進みすぎ、コンサルはコンサルだけ、設計者は設計だけ、プログラマはコーディングだけ、保守は保守だけという、特定の工程だけしかこなせないエンジニアが多数できあがってしまいました。これでは技術の変化に耐えられません。大手企業だからといって、エンジニアが幸せなわけではないのです。
これは経営の問題です。売上ばかりを重視し、技術者を安く切り売りするようなビジネスでは、優秀なエンジニアは育たないのです。だから、ウルシステムズは敢えて真逆の経営をしています。私たちは、売上よりも、お客様の満足を常に上回る最高の技術を提供することを重視しています。売上はあくまで結果です。価値が高い仕事こそ、質の高い日本のエンジニアが本気で取り組むべきことです。個が輝くような仕事こそ、誇りある技術者の美学です。
量ではなく質、単なる規模ではなく価値を尺度に、経営するだけで、非常に優秀な技術者が多数集まってきてくれます。ゼロからスタートしたウルシステムズですが、創業からたった6年にもかからず上場でき、現在も堅調に拡大できているのは、このDNAがあるからでしょう。
IT技術の変革は、誰にとっても平等のチャンスを与えてくれています。たとえベンチャーであっても、若手であっても、世の中を席巻できるチャンスがあるんです。守っていては駄目です。チャレンジすることが重要です。
4 . エンジニアを目指す大学生が読むべき本として、漆原さんおすすめの書籍を教えて頂けますか?
新しい技術はいくらでもこれから出てきます。IT業界はやったもの勝ちという業界で、若い人にも大きなチャンスがある業界です。ぜひ新しい技術にどんどん自分でも触れて下さい。また新しいものがどんどん出てくるからこそ、本質的な技術も学ぶという努力をしてみてください。
これから技術イノベーションの醍醐味を理解しておきたいという方には以下の書籍をお薦めします。技術革新の醍醐味を理解すれば、エンジニアという仕事の魅力も増すことでしょう。
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
またJavaやC言語、オブジェクト指向設計などを一通り理解した方であれば、一旦基礎技術に戻ってみるのもいいでしょう。たいへん読み応えがありますが、本質的な技術の奥深さを味わえると思います。
ぜひ読んでみて下さい。
5. 最後にエンジニアに憧れを抱いている学生の皆様にメッセージをお願い致します
今の時代においてエンジニアを志望するのは大正解です。
製造業も、流通サービス業も、金融も通信も、はたまたゲームやエンターテイメントも含め、あらゆる業界にITが必要不可欠になってきているからです。優秀なエンジニアはどんな企業からも人気で、活躍の場がたくさんあります。
是非、日本を代表する優れたエンジニアを目指して下さい。