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中央大学理工学部 電気電子情報通信工学科 教授 竹内健さんインタビュー

今回は中央大学理工学部 電気電子情報通信工学科 教授 竹内健さんにこれからの時代における大学生のキャリアの考え方についてお話を伺った。

今回は文系、理系の大学生両方の方々に対してお話させて頂ければと思います。文系、理系という区分で言えば、文系の人は数学で苦労される方が多いような印象を受けます。私が留学して、スタンフォード大学のMBAプログラムを受講していたときもそうでした。

ただ数字を使ってきちんと考えられる力は文系、理系に関わらず非常に重要だと思います。文系であったとしても、大学入試において必ず数学の試験はあるべきだと思います。

現在世の中の仕事見回してみると、製造業、金融、ITの分野であっても本質的に求められる力は変わらないような気がします。向き合っている物事の対象が違うだけであって、そこでの思考のプロセスに関しては非常に近しいものがあるように思います。少し具体的な例をあげて話をしようと思います。

研究者で言えば、仮説を立て、物事をパラメータに分解して、数字的な根拠をもとに検証し、結論を導き出します。このプロセスは大学という教育機関であれば、研究室に入ればきちんと身につけられる機会があります。ただしこのような思考プロセスはビジネスの世界でも役立ちます。

今世の中にどのようなニーズがあって、そのニーズの市場規模はどのくらいで、その市場規模に参入する余地はあるかどうかの判断を下し、実際にビジネスを実行していくというようなプロセスも研究分野におけるプロセスと非常に近しいものがあります。

このような思考プロセスを身につけられている人は、たとえある分野から別の分野に移ったとしても、大きな成果をあげられるように思います。このような思考プロセスこそ身につけるべきものだと私は考えます。研究をやっているからといって、それが他の分野で応用のきかないことかというと、そんなことはないと大学生の皆様には伝えたいと思います。

そもそもこの今の世の中においては技術の流行り廃り、ビジネス環境の移り変わりもどんどん激しくなってきているのですから、ある特定の分野に固執し続けることはあまり得策ではありませんし、意味がありません。

産業の移り変わりのライフサイクルも短くなっています。なので、新しい技術が出てきたときにむしろこれまで述べてきたような思考のプロセスを身につけておき、それを実際に生かし、異分野でも活躍できるようにしておくことが大切なのではないでしょうか?ある分野を何年やってきたからというのは、これからの時代はあまり意味がなくなるように思います。

これまでにお話してきたような思考プロセスが実際に身に付いている方の実例としては、ナビスコからIBMに移り、CEOを務めたルイス・ガースナーなどが挙げられるのではないでしょうか?経営者として思考してきたそのプロセスは、たとえ業界が大きく異なる企業の経営においても生かすことができることを物語っています。

近年の技術の進歩はめまぐるしく、その進歩により今後の世の中を考えたときに人間がこなすべき仕事はますます減少していくことが予想されます。コンピュータやロボットにとって変わられていくでしょう。機械にできることの範囲が広がっているのです。決められたことをやる正確性であれば機械のほうが格段に人間よりも優れています。例えば、Amazonが大規模な倉庫にロボットを導入して、人間でなくても荷物を運搬できるようになってきています。また薬剤師の仕事をロボットが行うこともできるようになってきています。

このような変化の中で、どのような技術に着目し、さらにそこからビジネスをしていくかということを考えていける人材が求められるようになるのではないでしょうか?

ではこれから今の時代に生きる私たちは何をするべきでしょうか?変わりゆく時代において、世の中どうなるのかわからないのですから、繰り返しになりますが、自分の頭で考えて、仮説を立て、物事をパラメータに分解して、数字的な根拠をもとに検証し、結論を導き出していくしかありません。

そして自分の現時点で持っている強みを考えてみるといいと思います。そこに固執してしまうことはよくないことですが、その強みの延長線上で勝負することを考えてみることができるのではないでしょうか?その強みの延長線上で、エンジニアであれば時代の流れを見据えて、どの分野の技術をより磨いていくかというような目利きをしていく必要があるように思います。

また会社に頼れる時代ではすでになくなっているので、大企業であるかどうかに関わらず、できるだけ自分で裁量をもって色々なことをやらせてもらえるような職場を求めていくことが大切だと思います。そういう意味ではハードな職場も、自分のスキルを伸ばすという意味においてはプラスになりうるように思います。自分のロールモデルとなるような人を探し、そういった人がいる下で働ける環境を手に入れるというのもいいかもしれませんね。

ちなみに私自身の経験で言えば、当時東芝に在籍し、フラッシュメモリの開発者である舛岡先生の下で開発させてもらえる機会があるということで、当時博士課程への進学と東芝への就職に悩んだ結果、東芝に就職することを決めました。誰と一緒に働くかは非常に大きな意味を持ちます。この人だと思ったときにその人との縁を絶対につかみにいくことが大切だと思います。

当時東芝はDRAMの開発に注力していて、フラッシュメモリの開発メンバーは少数であり、とにかく必死で自分でやるしかないような状況でした。そのような厳しい環境に身を置けたことも後から考えれば非常に幸運なことだったと思います。

最後になりますが、語弊を恐れずにいえば、今の若い方にはあまり年寄りの話をきかないで欲しいと思います。上の世代の人達が生きた時代とこれからみなさんが30年、40年生きようとしている時代は違います。自分の頭で考え、ぜひ行動してみてください。

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