今回は名古屋経済大学で講師を務める伊藤繁生先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。キャリア教育を担当している伊藤先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いしていきます。
現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について
現在は、1年生のキャリア教育科目、2、3年生の就職活動対策向けの授業の担当をしており、学生のキャリア形成を授業を通して進めています。また、本学では2年次にインターンシップ科目を必修としており、そちらも科目担当の先生と一緒に対応しています。
本学はキャリアセンターにキャリア教育の担当教員が常駐している、全国的に珍しい大学です。そのため、授業の受講者がキャリアセンターに頻繁に来訪できる体制を取っており、学生の様子をキャリアセンターの職員と共有しながら、キャリア教育・支援に力を入れています。
最近は、本学で導入しているPROGテスト(大学における教育効果測定の一つ)の結果とキャリア教育の関連性に注目しており、インターンシップに参加した学生の能力伸長について分析しています。
インターンシップに参加した学生は、コンピテンシー(社会人として周囲と影響し合いながら適切な行動をとれる力)について、能力向上の可能性が見られるなど、教育効果について検証しています。
小学校や中学校におけるキャリア教育の一環として、講演活動を行っています。大学で伝えているキャリア教育の内容を初等・中等教育の現場でも役立てられたらと考えています。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

大学院の修士課程を修了後、小学校の教員として3年間担任を勤めていました。ただ、元々教育史に関心を持っており、大学での研究職を目指していました。
そこで、もう一度大学院に入り直そうと決め、小学校教員を退職し、一旦大学職員として勤めながら大学院に入学しようと考えていました。ところが、大学職員として配属されたのがキャリア支援部門で、そこで出会ったキャリアコンサルタントの先生の影響で、キャリア教育の道に進むことになりました。
まず小学校の教員という安定した仕事を辞めることに大きな不安がありましたが、年齢的にも「やるなら今しかない」という思いもあり、退職の決断をしました。タイミングも大切でしたが、一方でうまくいかなかったら、もう一度小学校教員に戻ろうという思いもありました。
うまくいかなかった場合の手立てを考えていたことも、乗り越えることができた一つの要因だったと思います。
大学教員になってから授業で学生と向き合う時、小学校教員の経験が非常に役立ちました。授業の運営や話し方等、小学校教員のやり方を応用する中で、大学生も小学生も共通するところがあると感じています。
キャリア形成と意思決定に関する知見

心理学者ジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された「計画的偶発性理論」というキャリア理論があります。自分自身に予期せぬ出来事が起きたとき、それを最大限活かすことによって、キャリアを切り開いていくという理論です。
偶然の出来事を悪いことではなく、人生の転機というチャンスと捉えて行動することが効果的な意思決定の一つだと思います。私の場合は、キャリアコンサルタントの先生との出会いが、そのままキャリアコンサルタントの資格取得へ繋がる人生の転機でした。
あの時、資格取得の勉強を断っていたら、今の人生はなかったと思います。
現代社会は特に、VUCAの時代と呼ばれるように、変化の激しく、先の読めない時代になってきています。そのような中で、一つ一つを詳細に計画立てたり、計画通りにキャリアを積むこと自体が難しいのではないでしょうか。
現時点でのキャリアを振り返り、目の前にチャンスとなることがあったときは、「それにチャレンジしてみよう」という考え方が、自身のキャリアを切り拓くポイントになります。偶然の出会いや仕事という自分の意思とは関係ないことに目を向けてみることが、今後のキャリア形成において重要かと考えます。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス
自分に合った仕事や職場を考える時、まず、これまでの自分の経験を振り返ることが大切になりますが、その中で、自分の長所や強みを振り返ることになるでしょう。その際、自分の意志でやってきたことだけでなく、強制的にだったり、偶然やることになったことも、是非振り返ってみてください。
長所や強みは強制されたことや偶然やることになったことで、意外と成長していたりするものです。
キャリアデザインの専門家、大久保幸夫氏が提唱している「筏下りと山登り」のキャリアモデルが参考になります。偶然の出会いや仕事を積極的に受け入れ前向きに取り組み、社会人としての基礎力を身につけていく中で、自分自身の専門性を見出していくことが大切です。
変化の激しい現代社会では、自分の意志に反したことが多く起こることが予想されます。そんな時、その機会を活かすことができるように、物事に対して柔軟な姿勢でいることが大切ではないかと思います。
名古屋経済大学の基本情報
| 名称 | 名古屋経済大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒484-8504 愛知県犬山市内久保61-1 |
| 大学HP | https://www.nagoya-ku.ac.jp/ | 今回インタビューにご協力いただいた先生 | 名古屋経済大学 伊藤繁生先生 |


