今回は埼玉工業大学でキャリア支援センターの講師を務める藤田拓勧先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。キャリア教育を担当している藤田先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いしていきます。
研究背景・専門領域に関して
「内定ブルー」です。就職活動を終えた後に、本当にこの就職先で良いのか?と不安になる状態を指します。
この要因には、就職活動の早期化が影響していると考えています。早期化が進んだ結果、早期に内定を獲得し、あまり深く考えずに、内定をもらった企業で就職活動を終える学生が増えているように思います。
就職活動終了から大学卒業までに長い期間が空いてしまうと、「これで本当に良いだろうか?」と考え始めるわけです。これは、近年の内定辞退率の高さにも繋がっていると考えています。
企業も様々な施策を講じ、辞退率自体は下がったそうですが、早期化は、学生のためにも企業のためにもなっていないのではないでしょうか。
福利厚生や勤務地などの労働条件を基準に企業を決めようとする傾向が強いことです。学生のみなさんからは、一言目に「実家から通える企業が良い」「完全週休二日制が良い」「完全テレワークで働きたい」等の希望を聞く頻度が増え、課題感を持っています。
親御さんが強く介入しているパターンも見受けられます。労働条件ももちろん大切ですが、その企業で「何をして働くのか」を、学生のみなさんにはまず考えて欲しいと、日々思っています。
キャリアの意思決定のプロセス(研究・実務)について

そのような時は、きっと現実や様々な感情が入り混じって、優先度が付けられなくなっている時だと思います。そこで、まずは「これは譲れない!」というものを見つけると突破口が拓けるかもしれません。
これを、キャリア理論の概念で「キャリアアンカー」と言います。キャリアアンカーには8つの種類があり、例えば「専門コンピタンス」というキャリアアンカーを持つ場合は、ジェネラリストよりスペシャリストが向いている傾向にあります。
つまり、総合系よりは、専門職等での就職を考えられた方がご自身に合っていると考えられます。無料で診断ができるWebサイトがありますので、参考までに是非一度やってみてください。
就職活動には様々な効用があると考えられますが、例えば、就職活動の困難度は、自己成長感(自分が成長したと感じる主観的な感覚)を高めるということが実証されています。私は、就職活動は、まさにビジネスの現場そのものを体験し、社会に出て必要な基礎力を底上げできる場として、大変有効な場だと考えています。
少なくとも私は「就活楽勝だったよ!」と回答するような就活にはしないで欲しい、と想いながら、日々の就職支援に取り組んでいます。
職業選択・企業選びについて
私もその一人だったので気持ちはよく分かります。一番簡単な方法は気にしないことですが、そうはいきませんよね。
自信は何もないところからは生まれてこないと思います。仮に、根拠のない自信で成功しても、それには再現性が伴いません。
就職活動でも小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。就職活動はある程度正攻法が決まっています。
まずは、基本的なことから着実に取り組んでみてください。その積み重ねが、自信に繋がっていくはずです。
学歴に関しては簡単です。人手不足の今、学歴フィルターを使っていたら、どの企業も採用がままなりません。企業も大学名は「概ね」気にしていないので、企業にどう自分を売り込むかを前向きに考えてみましょう。
「踏みとどまる力」だと思います。近年は転職が当たり前になりましたが、一方で、安易な転職も増えたように思います。
中途採用は、原則、それまでの職歴や業績がモノを言う世界です。しかし、評価される職歴や業績もなく、転職を頻繁に繰り返す人は、企業側も採用しにくいはずです。
一度踏みとどまって、その先のことを冷静に考えてみてください。意外に大したことがない問題だと気付けたりすることも多いはずです。
先生の専門的視点からのアドバイス
やりたいことが見つからない、この仕事は自分に向いているのか?多くの人がこんな悩みを持っていると思います。一方で、自分に向いていることややりたいことは「いつ見つかるか分かりません」。
向いていることややりたいこと探しに終始するのではなく、この会社で自分に何ができるか、それが社会(誰)の何の役に立つのか、を考えてみて欲しいと願っています。また、仕事を好きになる、という選択肢も持っていただきたいと思っています。
私も、たった5年ですが、ITエンジニアとして勤めました。一方で、1秒たりとも、ITエンジニアに向いていると思ったことはありませんでした。
でも、繰り返しやっていけば、できることも増え、そこで積み重ねた小さな成功体験が自信に繋がり、結果的に仕事も大好きになりました(周りがどう思っていたかは別です)。「好きな仕事をやるか、仕事を好きになるか」の2択だと思います。
悩んでいる若い方々には、何よりもまず、「働く意思」を強く持って欲しいと思っています。その上で、自分に与えられた仕事があるなら、まずは目の前の仕事に前向きに全力で取り組んでみてください。未来が拓かれるはずです。
埼玉工業大学の基本情報
| 名称 | 埼玉工業大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒369-0293 埼玉県深谷市普済寺1690 |
| 大学HP | https://www.sit.ac.jp/ | 今回インタビューにご協力いただいた先生 | 埼玉工業大学 藤田拓勧先生(講師) |


