今回は金城学院大学で教授を務める石津先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。プログラムの効果評価、キャリア発達、働く人のメンタルヘルス、生涯発達を担当している石津先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いしていきます。
現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について
研究では、特に産業領域における臨床心理学に関心があり、職場で感じるストレスやメンタルヘルスの問題を中心に取り組んできました。
大学では産業・組織心理学や産業カウンセリング、キャリアカウンセリングなどの授業を担当しています。ゼミではアンケートやインタビューの手法を使ってデータを収集・分析する質的・量的研究の進め方を学生と一緒に学んでいます。
これまでの研究で印象に残っているのは、修士論文で扱ったメールのやり取りに伴うストレスの問題です。単なる作業負荷だけではなく、内容の複雑さや職場のルールの曖昧さといった“見えにくいストレス”を明らかにしました。
「自分だけじゃなかった」と多くの人に共感してもらえたことが心に残っています。また、今回のインタビューに重なりますが、変化の多い時代を生き抜くための「ライフキャリア・レジリエンス(逆境下でもキャリアを立て直す力)」という考え方を共同研究で提案できたことが嬉しく思っています。
研究テーマでは、特に女性や高齢者、若者のキャリア形成や、持続可能なキャリアの在り方に注目が集まっています。研究を通して、働く人が自分らしく、自律的にキャリアを築いていける社会づくりに貢献したいと考えています。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

学部卒業後はいったん就職しましたが、働く中で社会人のメンタルヘルスに改めて関心を持ち、大学院へ進学しました。この決断が研究職に就くことにつながる大きな転機となりました。
進学後、臨床心理学の分野では、研究と実践の距離が近く、実践から研究が生まれるスタイルがあると知ったことも、研究者を志すきっかけになりました。
キャリアの中で最も大きな決断は、新卒で勤めた仕事を辞める決断でした。「心理では仕事がない」と言われることもありましたが、それならアルバイトをしながらでも心理の仕事に関わればいい、と腹をくくって進む道を選びました。
意識して研究者としてのキャリアを築いてきたという実感はあまりないのですが、研究室の先生や先輩、同期・後輩、就職後も同僚の先生方など、周りの方々に支えてもらったのが大きいです。特別なスキルよりも、自分にできることを丁寧に積み重ねること。それしかないのだと思います。
地味ですが、必ず誰かが見ていてくれるように思います。
キャリア形成と意思決定に関する知見
人生の大きな転機では、理性だけでなく直観も大切にする姿勢が効果的だとされています。考えすぎて迷いが深まるときは、少し肩の力を抜き、直感が働く余白をつくることも有効です。
キャリアの節目で自己分析を行う際には、「自分がどんな人として記憶されたいか」「何のために生まれ、何をして生きたいのか」といった根源的な問いについて考えてみてもよいでしょう。答えを得るのではなく、問うこと自体に意味があります。
転職を考える際は、前職で改善したい点を明確にし、それを満たす職場かどうかを基準にすると判断しやすくなります。ただし、次の職場がすべてにおいて優れているとは限らないため、自分が優先したい条件を把握しておくことが重要です。
現代は企業も変化の波にさらされ、採用時と同じ環境が続くとは限らない時代です。そういう意味で、現代における個人のキャリア形成は不安定さを増しており、自分でキャリアを築く力が求められています。
あまり知られていませんが、キャリアを築くことを「キャリアクラフト」と表現することがあります。キャリアは泥臭く、自分の手で作り上げるもの、という含意です。
キャリア選択には心理学の知見も活かせます。キャリアを庭造りにたとえるワークでは、キャリアを築くにも、プランがあり、それを実現するための行動があります。
季節(時期)を読み、種まきをし、育てる。余計な雑草や虫を取り除き、栄養をやる。
四季の移ろいのように、キャリアにも、芽吹き成長、収穫や衰退(と次への準備)の時期があります。こうした「キャリアの庭」を思い描いてみることで、新たな気づきが得られるかもしれません。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス
長期的なキャリアを考えるうえでは、シャインが提案した「キャリアアンカー」という概念が役立ちます。これは、自分の軸となるもので、シャインは働き始めて数年経つと少しずつ見えてくるとしています。
変化の激しい時代のキャリア形成について、サビカスは「自分で自分がわからなくならないこと」が大切だとしています。望みどおりの職場や仕事ばかりではないかもしれませんが、価値観や大事にしたいものを見つけていくと、今の仕事でも体現できる部分が見つかるかもしれません。
そうした軸があると、キャリアが紆余曲折しているように見えても、自分では筋のとおったものとして理解できるのではないでしょうか。
自分に合った仕事を探すには、古典的ですが、職業相談を開始したパーソンズが指摘したように、「自分」と「仕事」を知り、「マッチングさせる」ことが有効です。仕事が自分に合わないと感じたとしても、何が合わないのかを理解できれば次の選択に生かせます。
キャリアの転機で不安や迷いが生じるのは自然なことです。そのときは、不安と同時に「どうなりたいか」も整理してみるとよいでしょう。
次の仕事がすべての面において条件がよいとは限りません。自分なりに考え、何を優先して選択しようとしているのか確かめるプロセスは大事だと思います。
若いうちは、自信がなくても仕方ありません。私自身、何の実績もないのに自信をもてと言われても難しく感じていました。
自信の有無は置いておき、とにかく自分にできることを積み重ねていく。そうこうするうちに経験値が上がっていきます。
矛盾するようですが、現実的に考え、楽観的に歩みましょう。
金城学院大学の基本情報
| 名称 | 金城学院大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒463-8521 愛知県名古屋市守山区大森二丁目1723番地 |
| 大学HP | https://www.kinjo-u.ac.jp/ja/ | 今回インタビューにご協力いただいた先生 | 金城学院大学 石津和子先生(教授) |


