今回は日本経済大学東京渋谷キャンパスで准教授を務める山下誠矢先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。経営学や留学生のための専門教育を担当している山下先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いしていきます。
現在研究されている分野・具体的なご活動内容について
私は、研究では主に日本社会で暮らす在留外国人のキャリアに関する研究を行っています。教育分野では、留学生のための専門教育に特に力を入れています。
大学の授業では、日本人学生と留学生が共に学ぶ教室で、経営学入門や商学、ビジネスライティング、ビジネス実務等の科目を担当しています。ゼミでは、様々な選択肢から日本を留学先として選ばれた留学生が、安心して日本社会で長期的なキャリアデザインができることを願った「在留外国人のキャリア(留学、就職、転職、起業、婚姻、子育て等)をケースで学べる専門ゼミ」を開講しています。
現在、担当する専門ゼミでは、企業の外国人雇用に関する理解や専門知識を習得するために、留学生だけではなく日本人学生も勉学に励んでいます。
研究活動では、ゼミ生が在留外国人のキャリア(留学、就職、転職、起業、婚姻、子育て等)をケース学習できるように、様々なキャリアと向き合う在留外国人にインタビュー調査を行いました。そして、調査結果をケースにまとめ、「ニッポンを選んだ外国人留学生は今? 日本と母国の懸け橋となって」というタイトルで書籍にしました。最も大きな成果は、専門ゼミで書籍のケースを学んだゼミ生や卒業生から「様々なケースは、将来の暮らしの参考となりました」というお言葉をいただいたことです。率直に、嬉しかったですね。
在留外国人のキャリアに関する研究を通じて、限られた専門家のみに研究がアクセスできるだけではなく、一般読者や在留外国人、在留外国人を雇用する企業の人財育成にも役立てられるように、専門知識を可能な限り分かりやすく解釈し、書籍やWEBメディア等の多メディアでも伝えていることです。
最近、研究テーマとして関心があるのは、「企業が外国人留学生をどのように雇用して活かしていくか」です。関心だけで終わらせないために、年単位の時間を企画・調査・執筆にフル投資し、2025年11月に『図解入門ビジネス 最新外国人留学生・雇用の実際がよくわかる本』というタイトルでようやく書籍を出版できました。
並行して進めている研究では、留学生の専門教育に対する理解促進に、より一層役立てられるように、知財開発前の量的調査や質的調査を進め、どのような留学生の専門教育の分野に需要があるか、といった調査を行っています。世の中に留学生向けの日本語学習教材は多く散見されるものの、留学生のための専門教育(例えば、経営学や簿記、法学等)の学習教材はとても少ない現状があります。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

私は、日本人学生と留学生が共に学ぶ経営系大学院に通い、大学院を修了後にベンチャー系のコンサルティング会社で働きました。コンサルティングの仕事は大変魅力的で、将来的にもキャリア形成がしやすくなります。
しかし、その道でのキャリアを長く積もうと考えていた中で、昔から異文化体験の機会に恵まれていたこともあったことから、「いつか異文化理解を活かした仕事に携わることができれば」という考えが漠然とあったように思います。そのような中、20代後半の時に、偶然にも、勉学に励む留学生を受入れる教育実績や歴史のある専門学校で、経営分野での教員採用募集を拝見しました。教員未経験者では難しいと承知しながらも、1度の人生と考え、思い切ってチャレンジしてみることにしました。
本当に、「感謝」という言葉しかありませんが、休日であったにも関わらず、専門学校の先生方は面談機会を設けてくださりました。その後、専門学校で経営分野の教員としてデビューし、経験豊富な様々な専門分野をもつ先生方にも恵まれ、留学生教育の実務をご教授いただきながら、入口(入試広報)、中身(講義、クラス担任、教務)、出口(進路指導)の学校運営の一連の校務を学びました。
その後、30代前半の時にご縁があり、留学生教育だけではなく、留学生教育研究も通じて世の中に役立てられるような知財開発を行うと決めて約10年が経った40代前半の今、大学で留学生教育と研究に打ち込んでいます。
私には、学部時代から今日まで大変お世話になっている恩師がおります。経営分野やファイナンス分野の学術と実務の両方をこなす恩師からは、学術と実務の両方が大切であるということを学びました。
私の場合は、留学生教育研究が学術となり、留学生教育が実務と考えています。
振り返ってみると、様々な体験や経験を通じて、自らが進むべき道(仕事)を20代後半まで模索していたように思います。キャリアで難しいと感じた決断は、自らがシンプルにどのような道に進むかと模索し、進むべき道を決めることです。そして道を決めた後は、その道を一心に歩み続けることが決断を肯定することにつながります。
これまでの様々な体験や経験の中でも、前職の専門学校で学校運営の一連の校務を学べたことが、研究者としてのキャリアを築くために最も役立っています。留学生教育という過去と現在の現場経験や留学生教育に対する念があるからこそ、日頃の留学生教育研究にも力が入ります。
私は、計画的にキャリアを積むというよりは、学生時代の様々な学問の学びやアルバイト経験、多くの異文化体験、ベンチャー系のコンサルティング会社での業務、専門学校での留学生教育など、様々な学びの機会を通じて30代前半の時に「異文化理解を活かせる仕事⇒留学生教育・研究者」と道を決め、現在に至ります。様々な体験や経験を通じて、自らを模索しながら道を決めていくこともキャリアデザインです。
キャリア形成と意思決定に関する知見
文豪の武者小路実篤の「この道より我を生かす道なし この道を歩く」という有名な言葉があります。私は、若い頃にこの言葉と出会い、何度も励まされてきたと思います。私の場合は、この言葉と出会ったことが人生の転機で、様々な体験や経験から模索して自らが生かせる道を決め、決めた道を一心に歩み続けていることが効果的な意思決定のプロセスであると考えます。
これまでの様々な体験や経験を通じて築いてきた自らの個性を理解することです。強みや自分らしさ、性格、能力、興味、価値観等の個性を理解することは、「持ち前の個性に合った仕事とは何か」と考えることとなり、その仕事を通じたキャリア形成にも繋がります。
私は、「これまでの様々な体験や経験を転職先でどのように仕事に活かせるか」、さらには「転職先で新しい基礎の学びを通じて仕事でどのような応用が行えるようになるか」を判断基準にしてきました。
今後、少子高齢化の日本社会では、AIやロボット、諸外国からの人財受入れなどによって市場変化が加速していきます。市場変化は、個人のキャリア形成の変化や課題でもあります。
例えば、これまで人がしていた仕事がAIやロボットに変わり、業界によっては仕事の減少、諸外国からの人財受入れによって生まれた新たな市場への対応といった変化が挙げられます。このような時代には、AIやロボットに代替できない、人それぞれが持つ個性が仕事ではより大切になります。諸外国から受入れた人財の個性を理解して共生し、ヒアリングを踏まえて持ち前の個性が仕事でも最大限に発揮できるように職場環境を整えていくことも大切です。
日本社会では、外国人経営者が日本人と在留外国人に雇用を生むケースや、日本企業で外国人スタッフが管理職や正社員、アルバイトスタッフとして働くといったシーンが多く見られるようになってきました。今後も、様々な業界で、外国人スタッフを仲間として共に協業する機会が増加していきます。
そのような将来を踏まえると、キャリア選択では、職場で外国人スタッフと共にキャリアを歩むという考え方もより一層大切になってきます。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス
転職は、人生の体験や経験の一部です。転職を検討する場合は、これまでの様々な体験や経験がどのように仕事に活かせるかや、新しい学びとは何か、その仕事を続けた先にどのような将来像が描けるか等を自問自答してください。
仕事は、様々な市場変化によって需要が増加することや減少することもあります。このような仕事の需要増減は、いつの時代にもありました。
そのような時代に、人は、市場変化を理解して適用できるように努め、時には個性を活かしてこれまでと異なる世の中に役立つ新しい事・物などを創造してきました。過去の時代や現況、将来を踏まえた、私が考える長期的なキャリア構築の考え方とは、市場変化への適応力に加え、人それぞれが持つ個性とは何かと向き合い、誰しもが持つ素晴らしい個性を仕事に活かしていくことであると思います。
もちろん、自らの個性を活かして、これまでと異なる新しいことにチャレンジする力も大切です。
私は、若い頃に周囲から目標や夢があると聞かれるたびに、私にとって「目標や夢とはいったい何だろうか」と自問しても自答できませんでした。そのため、私は、何事も学びがあると考え、様々な体験や経験を通じて進むべき道を模索するように心掛けてきました。
仕事は、やってみないと分かりません。しかしながら、どのような仕事でも、キャリアに役立つと言えます。
遠い昔、学生時代に私は、コンビニエンスストアの夜勤スタッフや飲食店のキッチンスタッフ、アミューズメントパークの販売スタッフ、高校受験の塾講師、製造工場の派遣スタッフ、高齢者向けパソコン教室のインストラクター等、様々なアルバイト経験をしました。このようなアルバイト経験があったからこそ、教室で勉学に励みながら放課後に様々なアルバイトを行う留学生の心情が理解できたり、ときには休憩中に勉学以外のアルバイトをテーマとした雑談をすることもできます。
学生時代の様々なアルバイト経験も、留学生教育・研究にとても役立っているのです。
皆さんの目標や夢は何でしょうか。現在、目標や夢がある方は、その道を歩んでください。
もし、現在、目標や夢がない方は、様々な体験や経験を通じて模索し続けていると、きっとあなたに合う道が見つかります。道が見つかったら一心に歩み続けてください。
日本経済大学の基本情報
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| 大学HP | https://www.jue.ac.jp/ | 今回インタビューにご協力いただいた先生 | 日本経済大学東京渋谷キャンパス 山下誠矢先生(准教授) |


