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株式会社ワークスアプリケーションズ

今回は東京大学工学部の電子情報工学科出身で米国本社のLotus Notes開発に携わり、現在は株式会社ワークスアプリケーションズATE本部でシニアフェローを務め、アリエル・ネットワーク株式会社CTOでもある井上氏に話を伺った。B2BかB2Cか、経営に貢献できるエンジニアを目指すのか、はたまた起業するのか、様々な選択に悩むエンジニア必見です!

東京大学工学部の電子情報工学科を卒業後、アメリカでエンジニアとして働いていたそうですね。経緯を教えてください。

日本のロータスデベロップメント社(現IBM社)からアメリカ本社に出向のような形で移りました。当時はだいぶ生意気なところもあったのですが、日本にいても製品の根幹に携わる開発ができるわけでもなくて、つまらなかった。上司にそのことを伝えたところ、じゃあ本国本社に行ってみるかとなったのがきっかけでした。

向こうへ行くとLotus NotesのUnix版の開発計画が持ちあがっており、私はUnixと国際化に関して精通していたことから、プロジェクトオーナーとしても活躍していました。

−−順調なキャリアを歩んでいるように思うのですが、何か秘訣があるのでしょうか。

もともと大学ではUnixを学んでいて、アルバイトでもインターネットプロバイダーの立ち上げに携わっていたことから、その経験を活かすことができたのだと思います。学生時代から「20代のうちは、会社の中で偉くなるよりも自分の実力をつけたい」という気持ちが強かったので、なんでもやってやろうという気概で色々なことに目を向けて活動していたのが良かったのではないでしょうか。

アメリカから戻って1年後には、自分を含めたエンジニア5人でアリエル・ネットワーク株式会社を創業しました。プロダクトは、Lotus Noteと同じグループウェア製品ですが、まったく異なるテクノロジーを利用していました。技術的にはかなり尖っていたのですが、ビジネス的にはどうでしょう(笑)。ワークスアプリケーションズCEO牧野と出会い、エンジニアをとても大切にする心意気に惹かれて、グループ会社としてジョインしました。

B2Bのここが面白いというところを教えてください。

まず、プロダクトの用途を分類すると、「人の役に立つもの」と「人が楽しむもの」の2つにわけることができると思います。その上で、B2Cは実用系と娯楽系の双方のパターンがありますが、B2Bは実用的な側面が強いでしょう。

そこで、エンジニアが自分のキャリアビジョンを描く上でまず考えて欲しいことが、人に役立つものを作りたいのか、楽しませるものを作りたいのか、ということです。

この違いは、個人的にかなり大きい差だと思います。極論かもしれませんが、実は娯楽系には特別な才能が必要だと私は思っています。それこそ映画や小説に例えると、エンターテイメントの才能は必須ですよね。その才能が自分にあってやりたいと思うなら、娯楽系のB2Cにいけばいいと思います。しかし、そうでないのであれば、本当に自分がやりたいことは何なのかと立ち返って、真剣に考えるべきです。

心では人に役立つものを作りたいと思っているものの、皆それを見極めずして“流行しているから”などという感覚だけで流れてしまうのは、非常にもったいないことです。

また、世界規模までいくと違いますが、実用系のB2CはB2Bと比べて市場がかなり小さい。そのため、私自身の経験上ですが、人の役に立ち社会に貢献するものを作りたいという人は、B2Bの大きな市場にいた方が自分のやりたいことを実現できると、断言できます。

−− B2Bのソフトウェア開発はどのように進めるのですか?

B2Bの場合、製品リリースにあたっては、プロダクトアウト型とはいえ、顧客の潜在的な課題に対しマーケティング調査を行う必要があります。ワークスアプリケーションズでは、想定しうるだけの顧客像をきっちり考えてから設計します。また、製品規模がB2Cとは格段に異なるため、初期投資がかさみます。しかし、ワークスアプリケーションズはそれを補うだけの資本がある、日本では珍しい会社だと思います。

また、開発の進め方としては、いわゆる仕様書ではなく、まず製品コンセプトを企画書としてまとめます。これには顧客に対するメリットが書かれており、これをもとにプロダクトデザインに入ります。そしてリリース後にはDevOpsに取り組んで、継続的な改善を施していく、という形です。
ワークスアプリケーションズのビジネスモデルをみると、マーケットの需要よりも、顧客に与えるメリットをしっかりと考えてから製品化したほうが、成功確率が高いことがわかると思います。

−− ATE本部は、どのような開発に携わっているのですか?

私が所属するATE(Advanced Technology & Engineering)本部は、日本のソフトウェアテクノロジを世界レベルへ引き上げることをミッションとしている部門で、最先端技術の研究に取り組んでいます。少し前でいうとクラウドやApache Cassandraの構築で、今でいうと機械学習やデータアナリティクスの研究などです。ただ、単なる技術研究に終わるだけでなく、実際の製品に組み込んで実運用化すること、それこそ顧客に対して貢献できなれば研究の意味がありません。だから、自分たちの研究成果を発表する勉強会を設けたりレポートを提出したりと、エンジニアとうまくコミュニケーションを取って連携しながら、研究開発を進めています。

−−新製品「HUE」について教えてください。

従来のERP製品から脱却し、まったく新しいERPを開発しました。それが「HUE」です。経営トップが陣頭に立ち、私はテクニカル面を指揮しています。業界常識としては異色の技術を採用して、0.1秒の処理スピードとハイユーザービリティーを実現しました。

そして、今後取り組もうとしているのは、ワークスアプリケーションズのお客様である1000社以上の大手企業、つまり1万名の社員や1千億円の売上を持つ企業データを集積し機械学習で分析していくことで、処理を極限まで自動化するようなソフトウェアを作ることです。これだけ大規模なデータの活用・分析ができるのは、B2Bならでは、ワークスアプリケーションズだからこそで、技術の腕に自信がある人にとっては非常に面白いことだと思います。

このメディアを見ている学生さんたちに一言お願いします。

繰り返しになりますが、まず、将来のキャリアを考える上では、人が楽しむものか人に役に立つもの、どちらを作りたいのかと自分に問いかけることが重要だと思います。せっかくモノを作る力があるので、それをどこに活かしていくのかを、まず自分に問い直してみてください。また、その結果として、起業するか会社に入るかの選択はあなた次第です。

B2Bの面白さは、「人の役に立ちたい」という思いとモノを作る能力を活かして、「企業の経営に貢献できる」ということです。私は、エンジニアの中には自分で会社を経営する起業家ではなく、例えば参謀のように経営に貢献することに向いている人もいると思うのです。

イメージだけで、サービスを作って大当たりするという夢を持つことは否定しませんが、自分がどこに向いているか、よく考えてみて欲しいと思います。

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