研究室で行われている研究の概要を教えて下さい。また、最近ではどんなことに力をいれていますか?
私は元々数値解析などの分野の専門を担当していましたが、現在では教育工学についての研究をしています。教育工学とは、どの様に教育を行うのかということについて研究をしています。
例えばeラーニングや出席・小テスト・レポート提出・アンケート等を自動化したWebLecというソフトウェアを作っています。WebLecはJava言語で総数行が25万行程あり、一般の企業が作っているのとほぼ同様になります。その25万行のソフトウェアを我々は大学4年生に管理させていまして、恐らく大学4年生がこのレベルの規模の管理をしているというのは世界的に見ても珍しいかと思います。なので、ソフトウェア開発に関する様々なテクノロジーの研究や、実際にソフトウェアを作るということを行っています。
さらに、最近では電子教材について力を入れ始めました。コンピュータはデータ構造やプログラミングに関しても動きを見ることによって全体を理解する、ということが必要ですが本はそれができません。本では図を使用したり遠回しな言い方などで誤魔化して表現しています。しかし電子書籍は様々な媒体が利用できるので、本の中に動きを取り入れることができます。その動きを伴いながら質問をしたり読者の理解度を見る、場合によってはコンテンツと会話をする形で勉強を進めていくような教材を作りたいと思っています。
教育工学でのソフトウェア作成とは具体的にどのように作られるのですか?また、開発についてどんな能力が必要とされるのですか?
徹底的にやりたい学生には教育支援システムを作る為のシステムの仕組みを作らせています。さらに、教材支援システムでは高度なプログラミング能力が必要とされることも行いますし、そこまでプログラミングが好きではないという学生に対しては、eラーニングコンテンツを作ってもらうなど様々な分野で研究をしてもらっています。
教材支援システムはウェブアプリケーションですのでJSPやサーブレットというプログラムを使います。さらにサンプルがありそれを参考にしながら行いますので、Javaを完全に知らなくてもある程度組めるようにはなっています。
研究室でコードを書く際には、バージョン管理システムなどを使用するんですか?
その点が難しいところで、そういったシステムは特に使用していなかったのですが、やはりバージョン管理システムも然り、学生間の連携をしっかりと行っていないと、ある習性がとんでもない広がりを見せてしまうんです。
つまり、全部が動かなくなってしまうということがあります。なので、バージョン管理を含めてそういった様々な学生間のコミュニケーションなどを制御するような仕組みを作りました。そのシステムは何度か大学院生に作らせたのですが、その大学院生が卒業してしまいますと、誰も管理出来る人がいなくなってしまいます。
バグなどが出てきてしまったら使えなくなってしまうのが現状です。なので、企業が作ったものやフリーで出ているものを使えば良いのかもしれませんが、今のところは使用していません。
内田先生の研究室にはどんな学生が在籍していて、どんな職業につくのでしょうか?
私の研究室ではソフトウェアを作成している関係で、プログラミングに興味を持ってる学生が多いです。また、IT企業に行きたいという学生も多いです。就職に関しては、今年は就職率が良く7月には大学院生も含めて全員内定が出ました。ごく稀に、IT系ではない会社に行く学生もいます。それは本当にごくわずか数十人に一人の割合なので、ほとんどの学生が学校で習った内容を仕事でも活かせると思います。
最後に、学生は今後どの様な意識や行動、能力を伸ばすべきでしょうか。
コミュニケーション能力の向上だと思います。自分の意見を正確に伝えて相手の意見を正確に受け取ることや、議論をして協力して一つのものを作り上げていく。また、トラブルにどう対処するのか。
工学部だからというわけじゃないのですが、みんなで一つのものを作ったり目標に向かうことができる精神構造を鍛えるのは学校じゃないとできないと思います。個々の勉強も大事ですし、プログラミングができないと困りますが、プログラミングの授業も自分で考えて解いてもらわないと困るので、本人がうなりながら徹底的に考えてもらって作ってもらっています。しかし、実際の会社だとあんまり一人で悩むことはなく、わからないところは先輩に聞けば教えてくれるかもしれません。場合によっては後輩や友達も知ってるかもしれないので、人に聞いてあっという間に解決してしまうかもしれません。
授業では本人の頭を鍛えるために悩ませるのであって、そういった意味で問題が出されてレポートを解くときは友達と協力してやれば良いと思います。そういう力を養うことが、今の学生は出来ていないと思います。みんなで協力して自分の負担を少なくし、そして効果を大きくしていく。そういうやり方の勉強もあるのではないか、ということを個人的には思っています。