日々の生活の中で、私たちは色々なお店で買い物をします。朝はコンビニで朝食を買い、昼は研究室の仲間とランチ、夜は居酒屋で友達と就活のストレスを発散…。
いま挙げた例は日常生活のごく一部ですが、私たちが商品やサービスを手にするとき、多くの場合はその対価を支払う必要があります。この「対価を払う」ということを決済ともいいます。昔は決済手段といえば、現金やクレジットカードといったものが一般的でした。
しかし、技術の進歩により様々な決済手段が登場しています。株式会社セブン&アイ・ホールディングスのnanacoやイオンリテール株式会社が発行しているWAON等に代表される電子マネーや、価値が急騰したビットコイン等といった暗号通貨で決済を行う方法などです。
そして、今回ご紹介する「モバイル決済」も比較的新しい決済方法の1つです。
この「モバイル決済」ですが日本ではまだあまり浸透しておらず馴染み深いものではないのですが、いまや中国では急速に普及し、人々のライフスタイルに多大なる影響を与えています。今回は、この「モバイル決済」にフォーカスし、中国や日本における現状をご紹介いたします。
モバイル決済の仕組みは大きく2つ
まずモバイル決済とはどのような仕組みで行われているかご存知でしょうか?これは大きく分けて2つの仕組みがあります。
NFC(近距離無線通信)
1つ目はNFC(近距離無線通信)という技術を用いたものです。ソニーが開発したFeliCaや、タバコを購入する際に必要なtaspoなどは、このNFCの技術を用いたものの1つです。
またApple社のApple Pay、Google社のGoogle Payなども有名です。FeliCaはご存知でなくても「おサイフケータイ」なら聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれません。この「おサイフケータイ」は、FeliCaという技術を用いてサービス化されたものです。
これらは、簡単に言うとスマホなどにあらかじめ埋め込まれたICチップに個人のクレジットカード情報を登録しておきます。そのスマホをレジなどに設置されたリーダーにかざすことでICチップを読み込み、決済を行うという方法です。
アプリ決済
もう1つはアプリ決済と呼ばれる方法です。これはICチップなどを必要としないため、名前の通りアプリさえインストールすれば使える方法です。利用者はアプリをインストールし、個人のクレジットカードなどを登録します。
そして店頭に表示されているQRコードなどを読み取ることで、決済が完了する仕組みです。
中国におけるモバイル決済の現状
皆さんは中国と聞くとどういったイメージを持たれていますか?GDP(国内総生産)では既に日本を追い抜き世界2位の経済大国ですが、沿岸部などに代表される都市部と内陸部の農村地帯との格差が課題とも言われています。
そのため、生活面ではまだまだ日本の方が豊かで進んでいるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。ですが中国では、ここ数年でモバイル決済が一気に浸透し、日本では考えられないようなライフスタイルを実現しているのです。
スーパーやコンビニはもちろん、レストランなどの外食産業、航空チケットやタクシーといった交通手段、さらには露天商や屋台といったおよそテクノロジーとは縁遠いと思われるところまでモバイル決済が普及しているのです。
人々は外出時に全く財布を開くことなく、または財布を全く持ち歩くことなく決済を完了することができます。
私の同僚の中国人エンジニアは1年程前に中国へ帰省したそうです。普段は日本でITエンジニアとして働いており、日本文化に慣れ親しんでいるため、中国でも当然のように現金による決済をしたそうなのですが、その当時ですらお店の人に現金決済を嫌がられたり、友人からはそのスタイルは遅れていると笑われたそうです。
これは上海は北京などの大都市ではなく、少し内陸よりの地方都市であったのですが、そこでさえもそこまで深く国民の生活に根付いているのです。ちなみに彼はそれ以来、中国に帰省した際はモバイル決済を使っているとのことでした。
この中国でのモバイル決済には、アリババとテンセントという会社が大きく関わっています。アリババは世界最大級のECショップを提供しており、アリペイというモバイル決済を提供しています。
一方テンセントは、中国版LINEであるWeChatというメッセージアプリなどを運営しており、WeChat Payを提供しています。現在、中国内ではこの2社がシェアを巡って熾烈な競争を繰り広げています。
アリペイは日本進出を狙っており、各金融機関と交渉を行っているようです。個人情報流出の懸念があるためあまりよい回答は得られていないようですが、場合によっては状況が一気に変わる可能性もあります。
中国での普及と乗り遅れた日本
では、なぜ中国ではここまで普及し、日本では全く普及に至っていないのでしょうか。これには国の背景が複雑に絡んでおり、その要因も様々だと言われていますが、私は主に以下の3つがその原因だと考えます。
偽札の多さ
日本では紙幣や硬貨の偽造は重大な犯罪であり、偽札を防止するためにあらゆる技術が導入されています。そのため、日本では現金に対する信頼性が極めて高く、未だに決済方法といえば現金がトップとなっています。
一方、中国では偽札が非常に多く出回っており、現金に対する信頼性が非常に低いのです。モバイル決済は偽札の心配がないため、店側も積極的に導入しているという点も普及に一役かっているようです。
個人情報と政治
中国は社会主義であり、政治は共産党という一党独裁体制となっています。そのため、中国のあらゆる会社と政治は極めて近い距離にあります。個人情報は国が保持するものが当たり前という認識が国民には広く浸透しています。
モバイル決済が浸透することで、国民のあらゆる活動を全て把握することができるという中国政府の思惑も見え隠れします。
日本では、個人情報保護法のもと、あらゆる組織が個人情報を採集する際は、その目的を明確にする必要があり、目的外への使用は固く禁じられています。
また、日本国民も個人情報には非常に敏感であり、自身の経済活動が全て記録されるという事を嫌がる傾向にあります。このあたりの国民性や政治体制の違いは、モバイル決済普及率の差となっています。
新しいテクノロジーへの反応
最後に重大な1つのポイントがあります。国民のテクノロジーに対する反応です。
日本人は新しいテクノロジーに対しては、その信頼性が確立されるまでは「怪しいもの」「うさんくさい」といったアレルギー反応を取る人が多いです。
これは世代間でも差がありますが、特に高齢層はこの傾向が顕著です。ただ、若い層であっても新しいものに対してはあまり積極的に利用しない傾向にあります。
(ただし、今あるものをテクノロジーにより進化させるという面では世界でもトップクラスです。)
中国でのモバイル決済の普及を見ると、このテクノロジーに対するスタンスの違いはとても重要な差となっているといえます。
まとめ
今回は中国でのモバイル決済における現状をご紹介しました。残念ながら日本ではまだまだ普及には至っていませんが、少しずつその現状は変わろうとしています。
皆さんもご存知であるLINEがLINE Payというモバイル決済を普及するために、あらゆる施策を打っています。既に各金融機関との提携や決済端末の普及に着手しています。
普段私たちが慣れ親しんでおり、今やコミュニケーションのプラットホームともいえるLINEであれば、利用までのハードルはかなり低いでしょう。さらに若い層から比較的年齢が高い層まで広くユーザーを持つことも追い風となるでしょう。LINEに限らずですが今後モバイル決済を日本で普及させるためには、「安心感」が1つのポイントになりそうです
モバイル決済は私たちのライフスタイルを変えるテクノロジーです。このようにテクノロジーがイノベーションを起こし、人々の生活に多大な影響を与えている現象は、私たちITエンジニア、またはITエンジニアを目指す人にとっては、注目しておくべきニュースでしょう。
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