1.なぜいきなりアメリカで起業されようと思われたのですか?学生起業、なおかつ異国の地でとなるとかなりハードルが高いと思うのですが。
まず私がアメリカに行ったきっかけをお話すると、私はイギリスに留学することが決まっていました。ただイギリスに留学する前に少し時間があったため、英語圏であるアメリカに行ってみようと考え、アメリカに語学留学していた時期があったんですね。
滞在していたのは、アメリカの西海岸。ロサンゼルスのあたりにいました。そこではホームステイ先に滞在していました。そのホームステイ先のホストファミリーの方々から色んな人を紹介してもらうことができました。これは本当にラッキーだったなと今でも思います。
ちょうど私がアメリカにいったのは、1998年頃の話で、日本では1997年に楽天が創業し、1998年にはサイバーエージェントが創業しており、日本のITベンチャーの雄となる企業が誕生し始めていた時期だったと思います。
その時期のアメリカはドットコムバブルで、ホストファミリーの方々からご紹介頂いた人にも、私が3ヶ月後、半年後に会うと億万長者になっていたというような人達が多くいました。当時のアメリカのベンチャー企業は、バイアウト目的(会社を売却することをゴールとする)の会社より、上場するような会社が多く存在しました。そのような状況を目にして、私もここは自分でアメリカの地で創業してみようということで会社を始めることになります。
日本にいて、大学にいたときは、理系の学生ではありましたが、ネットビジネスをやろうなどとはまったく思ってもいませんでした。そういう意味でも、アメリカに語学留学して本当によかったなと思っています。
2.アメリカでビザを取得するうえでどのような苦労がありましたか?
当時は9.11事件が発生する前で、アメリカへの入国も比較的緩く、あまり入国者に対する審査は厳しくありませんでした。9.11事件以後は、ビザの取得は難しくなっているような印象があります。
私が最初にアメリカに入国したときは、語学留学ということで学生ビザを取得する形で入国しました。その後は、自分の会社をアメリカでつくり、その会社で自分を雇用するという形でビザを取得しました。最初の会社は異国の地で、一人会社。資本金も当時3万ドルほどで、若さゆえになせる技だったなと思います(笑)
アメリカでつくった会社は、通信事業を行うような会社を設立しました。途中もう一人雇用する形で、アメリカの現地企業との取引が多かったです。契約書の確認、ビジネス上のコミュニケーションも英語で自分自身でこなしていました。よく英語に関して問題がなかったのか?ときかれますが、最初現地に行ってからの1年間は苦労しました。しかし、多少文法上間違えていてもいいからとにかくしゃべるということを意識するようになると、だんだん話せるようになりました。
日本の受験英語では、動詞に「s」をつけるつけないというような細かい文法問題や、単語の並ぶ順番をきちんと並び替えで選択させるような問題が課されます。このようなテストで成績がいい人ほど、きちんとした文法の英語を話さないといけないという意識が出てしまい、英語を話すことで苦労するケースが多いです。私に関してもこのケースに当てはまりました。
会社を運営はじめてから少ししてからは、日本企業の方が現地の視察に来る際などは、現地の人との通訳をしていたこともあります。
3. グローバル化の進展のなかで、ビジネスにおいても今後縮小していく国内のマーケットに限らず、グローバル展開を見据えなければいけないとの声がありますが、そのような考えに対して創業当初からグローバルに考え、アメリカでの創業経験もある山下社長はどのように思われますか?
私はグローバルに事業展開することを考えすぎる必要はあまりない気がします。例えば、FacebookやTwitterといった著名なサービスであれば同一のプロダクトが世界展開されていますが、そうでなく、特定地域において非常に使われているようなサービスも数多くあります。
ですので、IT分野に限らずだと思うのですが、色んな国の文化や考え方を参考にしながら他の国に移転してみるという考え方が重要ではないかなと思います。やはり地域によって、求める趣味・趣向は異なるからです。
単純な例で言えば、ある国にあって、他の国はないものを販売するということを考えてみてもいいかもしれません。
少し韓国企業のお話をしましょう。国や地域によって、ビジネスの仕方も違うことを知ってもらえればと思います。
韓国には、企業がベンチャー企業として国から認定される制度があります。日本だどベンチャー企業の定義はありませんし、あいまいです。しかし、韓国では企業からベンチャー企業認定を受けられるような仕組みがあり、認定されれば国からの支援を受けることもできます。
このような国が企業をバックアップするという性質は、大きく成長している韓国企業には多く見られます。例えば、IT分野でめざましい成長を遂げているNHN,ネクソンもそうですし、サムスンやヒュンダイも国営企業的な要素を持っています。これは韓国企業特有のことだと言えるでしょう。
国ごとの差異を知り、それをもとに思考することが大事だと思います。
4. 今後の5年、10年を考えたときに山下社長が面白いと思われるマーケットはありますか?
現在日本の経済環境は悪いといわれますが、景気が悪いときでも、衣食住は絶対に必要なものだと私は考えています。衣食住に関わるような、価値あるサービスを提供していける企業は強いと思います。
また人はコミュニケーションをとらなくては生きられない生き物なので、Webサービスというとことでいえばコミュニケーション要素を持ったWebサービスは強いのではないでしょうか?LINEなどのサービスは非常に面白いと思います。
5. 山下社長は理系出身でプログラムが書ける起業家だと思いますが、経営者自身がコードを書けることの価値についてどのようにお考えでしょうか?
プログラムが書けることは、Webサービスの開発におけるディレクションをするうえで非常に重要だと思います。自分自身の経験でも、すべてのことに関してある程度経験があるとチームメンバーの気持ちもわかるし、プラスに働くと思います。
ただ私のように経営者というポジションの人間になによりも必要なものは、一人一人の人間ときちんと話をして、各人の考えていることをしっかりと理解できるかが重要だと思います。まず私は一緒に働く前に社員の価値観を必ずきくようにしています。それをきくのが経営者の仕事ではないでしょうか?
社員の価値観は、各人によって全く異なります。仕事の位置づけも全然人によって違うのです。仕事は生きるための対価をもらうための手段であり、仕事の時間以外での趣味の時間を重視する人もいるなかで、仕事を通じてより自分のスキルを磨き、より自分のやりたいような仕事がしたいというような価値観の人間もいるわけです。どちらがいい、悪いではありません。その価値観に応じて仕事をお願いするように心がけています。
ファイブゲートには現在20名ほどの社員がおりますが、彼らとは必ず価値観について話をしてきました。またアメリカで一人で創業したときとは違って、今はたくさんの仲間がいます。みんなで一緒になって売り上げを立てて行く喜び、楽しさも感じるようになりました。
これからさらに組織を拡大し、会社経営に尽力していきたいと思っています。
6. ファイブゲートでの有給インターンの魅力を教えてください
弊社は学生の有給インターンを積極的に募集しています。弊社ではやりたいことに対して環境をつくりますし、そこに対する投資も惜しみません。勤務時間、勤務形態なども各人と面談のなかで臨機応変に対応させて頂いております。
弊社はまだ20名ほどの会社であるため、特定の決まったルールがあるわけではないので、自分から動かなくでも教えられることを期待する方にはあまり向いていないかもしれません。ただ自分から積極的に質問をしてくるような方には、最高の環境だと思います。このような弊社の環境は、私がアメリカで学生時代を過ごした経験があることも大きいのかもしれません。アメリカの大学では、大学の先生は参考書を渡して、手取り足取り教えるということはしません。
参考書を渡した後、学生各人が学習し、そこから先生に対して学生が積極的に質問しにいくというスタイルです。ですので、アメリカの大学の講義では本当に質問する学生さんが多いです。日本の大学における講義とは大きな違いかもしれません。
7. 最後に山下社長から「エンジニアインターン」のサイトをご覧になられている学生の皆さんに一言お願いします。
学生時代に失うものはなにもありません。 まずは挑戦してみることだと思います。ただしそこには粘り強さ、継続することも重要だと思います。
一つ具体的な例を挙げましょう。今ゲームのデザインをやりたいという人がいたとします。その人はまだ学生で、実績・経験もありません。そのような場合にはどうしても経験を積む必要があります。大手ゲーム会社に入っていきなりデザインを学ぶのは難しいので、まずはゲーム会社に入ってゲームのサポート運営をしてみる、もしくは今のうちからソーシャルゲームをつくっているような比較的小規模な会社でデザインの経験を積むというようなものでもいいでしょう。
そのような段階を経て、実績とスキルを経て、自分のやりたいことに一歩一歩近づいていくという姿勢は非常に大切だと思います。いきなり自分のやりたい仕事ができないから何もしない、働かないとなってしまうとスキルも伸びることはありませんし、前に進むことはありません。
そういう粘り強さのようなものを持てるといいかもしれませんね。
[編集後期]
大学時代からいきなり渡米し、そこで会社をはじめてしまう行動力を持つ山下社長。
最後の山下社長からのメッセージにもあったように、学生時代に失うものはなにもない。
ならば自分のやりたいと思うことに対して、少しでも挑戦してみることが大事ではないのだろうか?