有期雇用契約(アルバイト)・正社員雇用契約・派遣契約・業務委託契約といったときに、皆様のその違いを認識されているでしょうか?今回は、これらの契約にどのような差異があり、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを人事・採用担当者目線で紹介していきます。
1. 有期雇用契約(アルバイト)とは?
まず最初に、有期雇用契約(アルバイト)の場合には、正社員と違って、雇用契約期間が明示されています。企業からみたときの保険料負担は少なくなります。では、どのくらいのコスト負担が減るのか?というと、アルバイトの勤務時間を短くすると社会保険料の負担が不要になります。ちなみに余談ですが、労働法律上のアルバイトとパートの違いはありません。
アルバイトと契約社員の違いに関してですが、この使い分けは不明瞭なのですが、一般的にはアルバイトが雇用契約書を交付しないことが多く、給与体系が時給制であることが多いのに対して、契約社員に関しては月給制あるいは日給制+残業代+諸手当となるケースが比較的多いです。さらにアルバイトの場合には、出勤日や勤務時間をある程度選択できる(シフト制)のに対し、契約社員は正社員と同様、フルタイムでの勤務を求められる場合が多いです。さらに社会保険への加入という点でいえば、アルバイトは社会保険に加入しないのに対して、契約社員は社会保険に加入することが多いという程度です。
ちなみに注意しておくべき点として、アルバイトでも正社員の4分の3以上の労働時間、勤務日数であれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務が生じます。余談ですが、この社会保険料から国からの雇用関係の助成金などは支給されています。さらに雇用保険に関しては、週20時間以上の勤務で31日以上の雇用が見込まれる場合には加入が必要になります。さらに所得税や社会保険料負担を免除されるか否かでいえば、アルバイト本人の年収が103万円以下であればアルバイト本人に所得税がかからず、さらに配偶者がいる場合には配偶者控除を受けられるなど税制上のメリットが大きいです。なお年収が130万円未満であれば、社会保険で配偶者の被扶養者扱いになるため、自分で社会保険料を支払う必要がありません。
2. 正社員雇用契約とは?
次に正社員雇用契約について説明していきます。正社員には、アルバイトとは異なり、雇用契約期間の明示はありません。基本的に継続的に雇用することが前提になります。保険料も企業が一部負担してくれています。雇用契約において、従業員との試用期間は基本的には三ヶ月、長くても6ヶ月で置いている企業が多くあります。この試用期間をうまく活用しましょう。
この試用期間中は採用側、求職者側にとってお試し期間と認識されていますが、本来の意味するところでは、本採用を控えて、必要な能力を身につけてもらうための教育訓練期間になります。なお試用期間中でも社会保険や雇用保険への加入義務は発生します。試用期間をうまく活用されている企業様の例としては、試用期間を1ヶ月の有期雇用契約とする方法があります。1ヶ月の就業後、双方で話をする場を設け、本採用とするか契約を1ヶ月で打ち切るかを決定することができます。仕事を通じて採用を決めたいという企業様は多くいらっしゃいますので、有効に活用されることをおすすめします。
なお雇用契約(アルバイトもしくは正社員)を結ぶとなった場合、次に困るのがどのような雇用契約を従業員との間で結んでおくかという問題です。ここでは雇用契約書の結び方について説明していきたいと思います。
大前提として、労働基準法においては、1週間に40時間以内、1日8時間以内とすると労働時間が決められています。それ以上の時間の勤務に関しては残業の扱いになります。給与に関しても、最低賃金以上の給与支払いが定められており、毎月決まった日に支払うことなどのルールがあります。給与を決める際には以下 のポイントを抑えておくとよろしいかと思います。
1. いくら給与を払うのか?(このとき最低賃金に注意して下さい)
2. 時間給、日給、月給にするのかを決める
3. いつ給与を支払うのか?(会社のキャッシュとの兼ね合いがあるので、税理士との相談の上決めるとよろしいかと思います)
4. 賞与・退職金の支払いについて考える(退職金はうまく使うとかなりの節税効果を発揮します。こちらも税理士の方への相談をおすすめします。)
雇用契約を結ぶとなった場合の注意点は、給与以外にも交通費、社会保険料負担まで発生してくることです。なので実質の負担金額がいくらになるのかをしっかり 把握しておかないと後々大変なことになります。だからこそ業務委託契約で会社の外に仕事を頼みたいという場合もあるでしょう。特に会社のコアコンピタンスとなる業務以外はうまくアウトソースしていくことも必要になります。
3. 派遣契約とは?
派遣契約の場合には、指揮命令系統は、派遣先企業にあります。雇用契約は派遣元企業と派遣社員間にあるため、保険料負担などは派遣元の企業にあります。派遣に関しては、一般労働者派遣と特定労働者派遣というものが存在します。
一般労働者派遣とは、基本的に派遣する労働者を派遣元は常時雇用しているわけではなく、派遣するときにだけ雇用契約を結ぶ場合です。1日のみの短期バイト、イベントの設営スタッフなどは、この一般労働者派遣になります。
一方で特定労働者派遣とは、派遣期間に限らず、派遣社員は常時派遣元の会社から雇用されている状態にあります。なので、派遣先がなくなったからといって、派遣元との雇用契約が切れてしまうわけではありません。
4. 業務委託契約とは?
最後に、業務委託契約(ちなみに法律上の要綱としては、業務委託という言葉は存在しません)ですが、請負契約(指揮命令系統は、請負企業にあり。雇用契約は請負企業と従業員間にあり)、委任契約、譲渡契約(売買契約)が業務委託契約と言った場合に、法律上の要綱として存在する項目になります。
請負契約とはなにかというと、成果物に対して責任のある契約です。成果物に対しての対価として報酬が支払われる契約です。偽装請負問題としてよく発生するのは、もともと正社員として雇用していた人間に対して、請負契約の内容を含んだ業務委託契約を結ぶことで、会社側が社会保険料の負担をなくそうとするものです。請負の場合であれば、出退勤の管理や作業の手順、使う道具などについて、発注元である会社には指揮権は存在しません。
以上4つの契約携帯についてご説明させて頂きましたが、雇用契約ではなく、派遣や業務委託契約にすると、会社とのしての保険料負担や交通費負担が減らせるということもあるため、会社のコアではない業務をアウトソーシングするうえでは非常に有効だといえます。昨今注目を集めるクラウドソーシングといったスキームもその一つだといえるでしょう。しかし、働く人からみたときに条件が悪くなりがちな側面も否めず、会社のコアコンピタンスとなるような業務においては、出来る限り働く人が安心して業務に取り組めるような雇用契約を結ぶ努力が継続的に発展する企業としては必要となるのではないでしょうか?