今回は椙山女学園大学の現代マネジメント学部で准教授を務める水野英雄先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。国際経済学、観光経済学、経済教育を専門としている水野先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
研究されている分野・具体的なご活動内容について

私の専門は国際経済学、観光経済学、経済教育です。授業は入門科目の基礎的な経済学と専門科目の国際経済学、観光経済学、演習(ゼミ)を担当しています。
学校での「金融教育」がスタートしてブームになっていますが、その内容は株の買い方などの「投資教育」がメインです。私は「金融教育≠投資教育」で、お金を増やすテクニックではなく、より本質的な「社会の仕組みを理解し、自立して生きる力を身に付ける」ことが学びの目的と考えています。
経済や金融に関する知識は社会人として必須ですが、単なる貯蓄や運用のノウハウではなく、よりよく生きるための「金融ウェルビーイング(幸福度)」を高めるための知識が必要です。具体的には、長い人生を見通した「ライフプランニングの視点」、契約やリスクに関する「身を守る知識」、どのようにお金を稼ぐか、お金を使うかの「合理的な選択・行動」を身に付けることで、不確実性の高い社会において自由で主体的な選択が可能になり、人生を充実したものにできます。
キャリアの意思決定・自分自身との向き合い方

私のキャリアは教員養成大学で社会科の教員になる学生に経済学を教えることからスタートしました。当時は、「学校ではお金の話はすべきではない。」という考えが主流で、社会科は地理や歴史、公民(公共)であっても法律や政治を学んだ教員が多く、経済はマイナーな分野でした。
夫婦喧嘩や親子喧嘩から戦争まで、「あらゆる問題は経済問題である。(水野の法則)」なのに、「なぜ学校教育では、生きていく上で不可欠な経済や社会の仕組みが十分に教えられていないのか」という強い問題意識を持ち、生きた経済を教える経済教育の研究へ進みました。さらには、「生きた経済」の実践として、地域活性化や地方創生に直結する「観光経済学(ダークツーリズムなど)」へ研究を広げていきました。
経済教育も観光経済学も、研究を始めてからブームになっています。今取り組んでいるダークツーリズムも戦後80年でブームになりました。時代の変化はどんどん早くなっています。一つの研究テーマを生涯追い続けることも素晴らしいですが、「10年後にピークとなる研究テーマ」を考えて取り組むことをアドバイスします。
特に、エンジニアの分野では、ビジネスとして将来性のある研究を、スピード感を持って取り組むべきだと考えます。
職業選択・キャリア形成について

お金に対する価値観や職業観の違いで、金融経済教育のあり方は国ごとに異なります。日本では「武士は食わねど高楊枝」でお金のことはなるべく扱わない、それが学校での金融経済教育の遅れにつながりました。
また、地理や歴史は地名や年号を暗記する科目で教えやすく試験もしやすい。一方で、経済は見方や考え方であり、教えるのが難しく、教員の苦手意識が強い分野でした。この傾向は諸外国も同様です。
そのためアメリカではCEE(Council for Economic Education 経済教育協議会)が教員に教えやすい教材の提供や教授方法の普及に組織的に取り組んできました。日本でも金融経済教育推進機構(J-FLEC)が設立され取組が本格化しています。私が特に印象に残っているのはフィンランドの取り組みです。フィンランドは学校や教員の裁量が大きく、教科横断型で実践的な体験学習が行われています。
金融経済教育に関しても、単なる暗記としての金融リテラシー(知識)ではなく、実際に使える金融ケイパビリティ(能力)の育成、そのために身近な問題から学び最終的には社会の仕組みを理解する、起業家教育等が行われています。
大学全入時代となり、また、リカレント教育へのニーズも増えている中で、かつてのように「研究を追い求める」学生だけでなく、大学での学びを職業の中でどのように活かすかを学生は意識しています。身近なところでは就職活動でエントリーシートに書く内容「ガクチカ」を求めています。
産学官連携によるアクティブラーニングは、学生にとって自分しかできない貴重な体験となり、ロールモデルとなる先輩を見ることで、起業等も含めた自分の将来を具体的にイメージできるようになります。企業や自治体にとっても、自らが気づかない若者の考えや意見を得ることで新たなビジネスチャンスとなります。
先生の専門的視点からのメッセージ

人口が増加して市場が拡大した時代には「規模の経済性」が働きましたが、日本国内では少子化による人口減少で規模の拡大は難しくなりました。そのため製造業でも製品(ハード)だけでなくサービス(ソフト)で付加価値を高める、関連した分野へ進出する「範囲の経済性」を追求しています。エンジニアはハードよりもソフトが求められるようになり、その転換が出来ないとキャリアの継続が困難になります。
人生100年時代となり、長いキャリアの中では「転換点」となる時が必ず訪れます。学生には「するかしないか迷った時は、した方がよい(借金と変な恋愛以外は)」とアドバイスしていますが、その選択の際に、スピード感を持って、積極的に新しい分野にチャレンジすることで新たな局面を切り拓くこと、変化する状況の中で常に学び続けるという自分自身への投資を行うことを心掛けて下さい。私が経済教育の研究を始めた頃はマイナーな分野でしたが、今は国家的な課題として法律で組織化までされました。
個々人の微力ではあるが「影響力」が社会を動かし、変えていきます。自分の仕事に誇りを持ち、社会をよくしていくという意欲を持ち続けて取り組んで欲しいと思います。
椙山女学園大学の基本情報
| 名称 | 椙山女学園大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒464-8662 名古屋市千種区星が丘元町17番3号 |
| 大学HP | https://www.sugiyama-u.ac.jp/ |
| 今回インタビューにご協力いただいた先生 | 水野英雄先生(准教授) |


