2023年に創立100周年を迎える文藝春秋。出版・編集というとどうしても文系学生や編集者志望の募集のイメージが強いが、今回の募集は「ビジネスプロデューサー候補」。それもIT業界、なかでもコンテンツ企画・運営やITコンサルなど、ビジネスを創造し成長させる業務への興味関心が高い人材が求められている。
文藝春秋にとっては初めてとなる今回の試み。入社後はビジネスを自分のアイデアで動かすといった活躍の道が拓かれている。責任は重いが、やりがいも大きい仕事と言える。その募集背景と求められる資質について、お話を伺った。
変化に直面している出版業界
チャンスを活かす力が求められる
文藝春秋 宣伝プロモーション局 ウェブ事業部 局次長
柏原光太郎さま
「2017年1月に『文春オンライン』をスタートし、1年が経過しました。順調にPVも増加して、知名度も浸透してきたと感じています。まずは順調な成長ですね。現在、『文春オンライン』の他にも『週刊文春』『Number』『CREA』などの各誌がWEBサイトを展開しています。今後はそれらWEB事業すべてでユーザビリティを向上させ、より高い成長を目指さねばと考えています」と語るウェブ事業部の柏原さん。文藝春秋の考える「WEB事業の成長」とはどんな状態を見据えているのだろうか。コンテンツの充実と、コンテンツをより効果的に見せるユーザビリティの向上だけが成長なのかと思いきや、「そうではありません」と即答された。
「まず近い将来、有料課金は考えないといけません。その他、イベントの開催や、他サイト・メディアでの記事使用料、そして広告収入もWEB事業の大きな収入源となっていきます。これらが拡大してこそ収益増がもたらされますので、そこではじめて成長したといえるでしょう」とのこと。
従来の「良質な記事を載せれば、雑誌が売れる」という、出版社のビジネスとマネタイズの構造が大変革期を迎えようとしている。これからの出版業界は従来のスタイルに囚われず、新たな収益モデルを考え出すことが重要であり、その先鋒がWEB事業というわけだ。
文春オンラインは、編集長以下、雑誌編集の経験者7人が集まって発足。1年間、運営を続けた結果、改めて明確になってきたことがある。それが「紙との差別化」だ。
「繰り返しになりますが、WEBの成功には、『コンテンツ発』の要素と『テクノロジー発』の両輪が必要です。幸い、当社には紙の雑誌で培ってきた『コンテンツ』づくりのスキルとノウハウは伝承されている。昨年ですが、某有名情報サイトが不適切なコンテンツがきっかけで、閉鎖に追い込まれたことがありましたが、この場合、運営会社のテクノロジーは素晴らしいものがありながら、コンテンツ管理が杜撰だった。当社の場合はこの逆で、コンテンツづくりは問題ありませんが、『テクノロジー』の部分が、まだ未熟。この点の克服が急務です。そのためにも、テクノロジーを含めたWEBビジネスに関心の高い人材を求めています。そのステップに踏み出すことが、WEBの収益モデルを確立するためにも必要なのです」
100年の歴史で蓄積されたコンテンツ力、新進のサイトには真似のできない確かな情報収集力はすでにある。あとはそれをいかにビジネスに結びつけるか。そこで求められるのが、「ビジネスプロデューサー」なのだ。
「起業家マインドやなにか新しいことを始めたい意志がある人、アイデアが溢れている人。そんな人に当社に新しい風を吹かせて欲しい。期待しています」
書籍を発行しているのではなく
新たなビジネスを生み出している
WEBやデジタルメディアを舞台に、新しい収益モデルを生み出す――そこにはどの様な人材が求められているのだろう。電子書籍編集部の吉永さんにお話をうかがった。
「紙と電子書籍を、対極のものとして考えている人がまだまだ多いのが現状。当社の電子書籍編集部は、それでは務まりません。いわば全く新しいビジネスをやっている感覚。もちろん、過去作品の電子化は、売上を支えています。ですが、文藝春秋の歴史や過去のコンテンツへの理解や知識が、たとえなくても問題はありません。なによりベンチャーマインドこそが、問われるのです」
文藝春秋は、型にはまらない電子書籍のオリジナル作品を次々と生み出している。世間の耳目を集める時事問題に絡めて渦中の人物が雑誌に寄稿した手記をまとめたり、文学賞を受賞した作家の単行本未収録の「幻の短編」を発行したり。いずれもタイムリーに発表することで、大きな注目を集めた。それを可能としたのは、アーカイブへの造詣の深さではなく、「いまの社会にヒットするコンテンツは何か」と常に世の中にアンテナを張り巡らせ、情報に検索をかけ精査し、なによりビジネスの芽を逃さないという、起業家的姿勢。
「対談イベントをまとめて発行した電子書籍も好評を博しています。企画を考えるときは『書籍として売れるか』だけではなく、同時にどんなムーブメントが起こせるか、どこで収益を上げるかを考えます。本や雑誌を校了して終わりではなく、さらに面白いことをしかけよう、長いスパンでどう儲けられるだろうかを見ています。従来の出版社にはない動きですね」
そして企画が決まれば、スピードを上げて実現していく。そこでは他部署と交渉し、調整するコミュニケーション能力も問われる。
自分のアイデアで、いかに世間の注目を集めるか。そしていかにビジネスとして成立させるか。それを考え、実現していく。それがビジネスプロデューサーに求められる仕事。
「自分のアイデアがビジネスに変わっていく。そして世間が動く。そんな醍醐味が味わえる。非常に多忙で難解。だからこそ面白い仕事ですよ」
文藝春秋とともに、
歴史と未来に挑む方を求めています
人事担当の執行役員総務局長の内田さんに、ビジネスプロデューサー候補に期待される人材、そして入社後の活躍の場についてお話を伺った。
「ビジネスプロデューサー候補という考え方じたい、これまでの文藝春秋にはありませんでした。しかし、柏原と吉永の2名が話したとおり、新たなビジネスの形を作る仕事。そしてこれからの文藝春秋を創る仕事です」
と話す内田さん。100年の歴史で培ったコンテンツの蓄積や、情報収集・発信力を元手に、これまでにない新しいアイデアをビジネスとして実現していく上で、その働き方やアプローチの仕方に制限は全くないという。
「縦横無尽に当社の中を走り回り、あらゆるリソースを活用し、また新たな取り組みをスタートさせて、ビジネスを創り出して欲しい。それが求める働き方」
従来の編集志望者や営業職などのビジネス部門志望者ならば、やはり文学に興味や造詣の深い人材や出版業界に愛着を感じる人材が優先して採用されがちだ。しかし、ビジネスプロデューサー候補にはこれまでの文化や慣習に縛られることなく、新たな一歩を踏み出すための起爆力を期待している。既存の人材に求められた要素は、あえて重視していないという。
「むしろ、本を読まない人でもかまわない。多彩なバックグラウンド、趣味・志向を持った人材たちに集まってもらい、お互いに切磋琢磨して新たなものを生み出して欲しい。重視するのは、WEBやデジタルビジネスへのリテラシー。学生時代に自ら何かを創った、運営したという方はその実績についてアピールしていただきたい。また、文藝春秋を使って新たなビジネスを興したい、というアイデアがあるならば、それも大歓迎です」
これまで一般読者を対象としたBtoCだった出版業界は、今後はBtoBへとビジネスモデルを広げる可能性を秘めている。紙からWEBへと世界も広がり、文字や写真の二次元の世界だけでなく、動画も活用する多次元的な思考やアイデアの創出が求められている。
「当社は、全社員350名の、実は小さな会社です。社風としては、部局を越えた横の繋がりがしっかりとあり、自由闊達に意見交換する土壌があります。生かすべきアイデアや意見は、年次にかかわらず聞き入れ、受け入れ、採用しています。そうでなければ、出版業界をリードする作品の発信やスクープの発掘はできませんから。こうした柔軟さや新しいモノへの好奇心――そんな社風を存分に活かして活躍できるのが、ビジネスプロデューサーともいえます。若手であっても、老舗出版社の新たな事業のトップランナーにだってなれる。全社員の力を使い、蓄積されたノウハウを活かすことで、自分のアイデアを次代を担う事業に変える、という大きな挑戦ができるのです。
私たち文藝春秋の未来を托したい。そう思える人材との出会いを楽しみにしています」
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文藝春秋が新たに求めるビジネスプロデューサー候補。そこにかける期待、そして果たすべき役割の重責は大きい。けれど、自分のアイデアを事業化することで新たな歴史を刻むというやりがいは、それ以上に魅力的だろう。
文藝春秋の新たなチャレンジに共感する、意欲ある挑戦者を待っています。
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