2019年のITトレンドを戦略的テクノロジー10選から紐解く
ITはその進化をひと時も止めることなく、進化と発展を繰り返してきました。特に昨今のIT技術に関する成長スピードは一段と加速度を増しているように感じます。さて、2019年もITは引き続き進化を遂げるものと期待されていますが、特に注目されている技術がいくつかあります。皆さんはいくつご存知でしょうか?
IT分野の調査や助言を行ってるアメリカのGartnerは、2019年の戦略的テクノロジー10選を発表しました。
Gartner Top 10 Strategic Technology Trends for 2019
このGartnerの発表は毎年行われており、業界内でも非常に注目されていますが、内容がやや難しくなかなか理解できないという側面もあります。そこで、今回は2019年のITトレンドとして、この戦略的テクノロジー10選について詳しく解説します。
インテリジェント・デジタル・メッシュ
Gartnerによれば、2019年に注目すべきITテクノロジーは「インテリジェント・デジタル・メッシュ」がキーになるということです。実はこれは新しい言葉ではなく、過去2年間もGartnerがITテクノロジーの土台になるものとして発表していた言葉です。
インテリジェント・デジタル・メッシュを直訳すると、自律的なデジタルの網ということになります。これまでのITはネットワークという言葉が多用されてきましたが、これも網という意味を持つ言葉です。
では、ネットとメッシュの違いとは何でしょうか?それは網目の大きさです。この先、ネットワークに接続する機器は爆発的に増加すると見られています。そのため、これまでのネットワークという概念ではなく、より網目が細かいメッシュという構造が広がっていくと見られているのです。
【参考】「破壊的影響を与える」2017年の戦略的技術トレンドの「トップ10」―ガートナー ジャパン
インテリジェント
インテリジェントというカテゴリでは、「Autonomous Things」「Augmented Analytics」「AI-Driven Development」という3つの技術がポイントとなっています。
Autonomous Things (自律的なモノ)
これまでのコンピュータは命令を受け、定められた処理を実行するだけのツールでしかありませんでした。それがロボット、乗り物、ドローン、電化製品、エージェントといったタイプのモノを通じて、陸海空に加えデジタルといったフィールドで自律的に動作し、私たちの仕事に置き換わっていくでしょう。
これを実現するために、様々なアプリケーションやサービス、そしてIoTのモノは、何らかの形でAIを組み込むことになるでしょう。
Augmented Analytics (拡張された分析)
Gartnerは「2020年までに、データサイエンスタスクの40%以上が自動化される」という予測を出しています。現状ではデータサイエンスにかかる労力は相当なものであり誰もができるといったものではありませんでしたが、「拡張された分析」とシチズンデータサイエンティストと呼ばれる人たちにより、ビジネス全体でデータサイエンスが広く取り入れられることになりそうです。
※シチズンデータサイエンティスト…ある程度のデータ分析スキルを有するものの、データサイエンティストまでの専門性は有していない人
AI-Driven Development (AI主導開発)
AIは少しずつ浸透しつつありますが、まだ普及したと呼べる状態にまでは至っていないのが現状です。2019年は、もっとAIが身近になっていくと予想されています。理由の1つは、AIを活用するための開発プラットフォームが整いつつあるという点です。
AIを活用するためにはデータサイエンティストが必要不可欠でしたが、AIプラットフォームやAIサービスを活用することにより、開発者はAIの活用や機能の実装について、データサイエンティストがいなくとも実現できるようになるはずです。
さらにAI主導開発は、開発作業自体も効率化をもたらします。コードの実装からテストに至るまで、様々な作業にAIが導入されます。これにより開発プロセスはスピードアップし、これまでよりもより多くの人が開発作業に携わることができるようになるでしょう。
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デジタル
デジタルというカテゴリでは、「Digital Twin」「Enpowered Edge」「Immersive Experience」「Digital ethics and privacy」「Quantum Computing」という5つの技術がポイントとなっています。
Digital Twin (デジタルツイン)
デジタルツインとはデジタルの双子という意味です。現実社会では解明が困難な事象が数多く起こります。これは何も怪奇現象といった類のものではなく、想定していない原因や原因の把握に多大な時間を要する部類のものです。
実際の製造現場でも、製品を生産する際には様々な原因により期待する品質を満たさないものが必ず製造されます。デジタルツインでは、実際の現実世界である「フィジカル」とデジタル上に精密な現実世界を再現した「サイバー」が密接に連携することにより、フィジカル世界での課題に対して、サイバー世界で分析・検証を行い、早急な課題の解消を図る技術です。
Enpowered Edge (エンパワード エッジ)
直訳すると「力強い端」となります。エッジとはネットワークの末端に設置されるコンピュータやデバイスを指しています。ひと昔前はクライアント側では必要最小限の処理のみを担当させる「シンクライアント」といった考えが流行しました。
さらにその後に誕生し、現在では開発現場でもファーストチョイスとなりつつある「クラウド」は、サーバーをインターネット上に配置したようなイメージです。このようなことから、「エッジ」に高性能なデバイスを持たせ、多くの処理をさせることは時代の流れに逆行しているようにも見えます。
ですが、今後IoT時代が本格的に到来すると何百億というデバイスがネットワーク上に存在し、接続することになります。こうなった場合、ネットワークは確実に混み合う事が予測されるため、Enpowered Edgeは、IoT時代を見据えた技術だといえるのです。
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Immersive Experience (没入型エクスペリエンス)
既にARやVRは目新しいものでは無くなりつつあります。スマホではARを活用したアプリを多く見る事ができますし、VRも様々なデバイスが誕生し、ゲームや動画などのコンテンツが増加しつつあります。
Gartnerは、2022年までに企業の70%がtoBあるいはtoC向けに没入型テクノロジを試し、25%は運用環境に展開すると予想しています。仮想アシスタントやチャットボットは私たちの感情を検出するようになり、さらに自然な会話を実現できるようになるはずです。
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Digital ethics and privacy (デジタル倫理とプライバシー)
最近ではFacebookなどが不正な個人情報の収集などを行ったとして問題となっています。また、2018年には欧州でGDPRというプライバシーポリシーも施行されており、デジタル上でのプライバシーポリシーは大きな注目を浴びています。
その中でデジタル世界でのプライバシーポリシーに関する考え方は「規約に準拠しているか」という観点から、「正しいことをしているか」といった観点にシフトしていくはずです。企業と消費者をつなぐものは信頼感です。企業は、より真摯にこの問題と向き合う必要があるでしょう。
Quantum Computing (量子コンピューティング)
量子コンピューティングとは、「スケーラブルで高度に並列」なコンピュータを指します。Gartnerは量子コンピュータを巨大な図書館でイメージすると分かりやすいと言っています。
これまでのコンピュータは、巨大な図書館にある本を1冊ずつ読み進めるようなもので、多大な時間を要します。一方、量子コンピューティングは、全ての本を並列して同時に読むようなものなのです。まだまだ誕生したばかりの量子コンピューティングですが、今後様々な分野で技術の活用が進むはずです。
メッシュ
メッシュというカテゴリでは、「Blockchain」「Smart Spaces」という2つの技術がポイントとなります。
Blockchain (ブロックチェーン)
仮想通貨などに用いられている技術として、皆さんもご存知ではないでしょうか。2019年は引き続きブロックチェーンがトレンドとなりそうです。
元々は分散型台帳を用いた技術であり、金融関連をスタートとしていましたが、その後政府や医療、製造、物流といった様々な分野へ拡大しています。企業は、ブロックチェーンを用いて銀行などを介さずに取引を行うことで、決済時間を短縮することができます。まだまだ未熟な技術ではありますが、2030年までには大きく成長する可能性があるため、企業は今のうちにこの技術の評価をはじめるべきでしょう。
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Smart Spaces (スマート スペース)
スマートスペースとは人間とテクノロジーが高度に作用する物理的、またはデジタルな環境を指します。最もイメージしやすいものだと、スマートシティというものでしょう。またスマートホームという言葉も最近はよく耳にするようになりました。
生活インフラをはじめとして、住居や産業、ビジネス、コミュニティがより深く結びついた新たな形の都市がすぐそこまでやってきているのです。
2019年はITがさらに生活に融合する
今回は2019年のITトレンドとして、Gartnerが発表した「2019年 戦略的テクノロジ10選」を元に詳しく解説しました。
2019年はさらにITが私たちの生活に高度に作用し、様々な価値を提供してくれると期待してよいでしょう。ITを「使う」時代から、「共に生きる」時代へと遷移しつつあります。今回ご紹介した内容は少し複雑だったかもしれませんが、皆さまはこうした大きな流れを見据えつつ、業界研究や企業研究を進めると良いでしょう。2019年もITの進化から目を離すことができません。
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