アラン・チューリングの功績とは?
不世出の天才数学者、アラン・チューリングの最大の功績はチューリングマシンの開発にあります。
チューリングマシンとは、計算機の機能を抽象的に考えるために考案された理論機械のことで、現代におけるすべてのPCの元となった概念です。
その最大の特徴は、アルゴリズムと計算の概念を一定の法則にまとめ上げたこと。
「アルゴリズム」とは、問題を解くために必要な手順、数学分野においては特に計算問題を解くための方法をモデル化したものを言います。そしてコンピュータに問題解決のためのアルゴリズムを指示することを、「プログラム」と呼ぶのです。
アラン・チューリングはチューリングマシンを適切に設計することで、すべてのアルゴリズムを実行することが理論上可なのだと提案しました。コンピュータの構造に不可欠なプログラムの概念を史上初めて作り上げた人物なのです。まさにコンピュータの祖というべき存在でしょう。
アラン・チューリングの大学時代とは?
チューリングの数学的才能は幼年期から顕著で、16歳の時にはアルベルト・アインシュタインの文献を理解していたと言われています。
一方で古典などの科目への興味に乏しく、勉強に対して消極的でした。そのため成績が振るわず希望していたケンブリッジ大学トリニティカレッジの奨学金に落選してしまいます。
そこで第二志望であるケンブリッジ大学キングスカレッジへ進学することになりました。
その後1935年に発表した論文が認められ、母校の特別研究員に選ばれます。チューリングマシンの元になる概念に着想したのもこの研究員時代でした。
彼の思考方法は一貫して数学的であり、ユニークなものでした。あるエピソードでは、自分の自転車のチェーンが定期的に故障することを知っていて走行中ギアの回転をカウントし、限界まで来ると一旦止まってチェーンを直していた。決して修理には出さなかったと伝わっています。
同性愛で告発をされ、自殺へ。悲劇の死
数学者としての将来を期待されていたチューリングでしたが、突如として不運に見舞われます。
それの理由は彼が同性愛者だったこと。当時母国イギリスでは同性愛は犯罪と定められていました。1952年チューリングは性的関係にあった青年からの窃盗被害に遭い、聴取の過程で彼も同性愛者であると発覚し逮捕されてしまいます。
裁判は有罪となり、収監を避ける条件として「女性ホルモン注射」(過剰性欲抑制が目的だったが効果は無かったとされる)を受けます。更にこの事件が元で職を失うことになり、差別的待遇を受けたことよって彼の心は深い傷を負ったのでした。
1954年、チューリングは自宅の寝室で遺体となって発見されました。死因は青酸中毒。自殺と断定され、死体の傍には齧りかけのリンゴが落ちているのが発見されました。まるで「白雪姫の毒リンゴ」。しかしリンゴに毒を盛ったのは白雪姫ではなく、継母。白雪姫は自殺ではなく他殺です。
自分は陰謀によって、社会による偏見によって殺されたのだ。チューリングは最期にそう訴えたかったのでしょうか。
その後もこの悲劇の天才を悼む声は絶えず、2009年英首相ゴードン・ブラウンが当時政府が彼に対して行った人権侵害について公式に謝罪しています。
ちなみにアップル社のCEOティム・クックは、2014年「ブルームバーグビジネスウィーク」誌にて自身が同性愛者であることをカミングアウトしました。
今も根強い偏見に苦しむ同性愛者たちを励そうとしての行動です。もし50年代に同性愛が犯罪ではなく、チューリングが偏見に晒されることがなかったとしたら、コンピュータの歴史はさらなる進化を辿っていたのかもしれません。
興味のある方はチューリングを題材にした映画を見てみてはいかがでしょうか?
苦難の道を歩んだチューリングの生涯を描いたが映画「THE imitation Game」が2014年に公開されています。
作中でチューリングを演じているのはドラマ「シャーロック」のシャーロック・ホームズ役で知られるベネディクト・カンバーバッチ。
数学者としての彼の苦悩が第二次世界大戦で破壊されていくのロンドンの街が重なり、暗い時代に飲まれていく天才の非運見事に描いています。
「コンピュータの父」として歴史にその名を刻むチューリング。映像を通してリアルな人生に触れてみてはいかがでしょうか?