少し私の略歴をお話させて頂くと、私は1999年有限会社コアプライス(現株式会社カカクコム)に入社し、各種商品価格比較システム、各種サービス価格比較システム、口コミ掲示板、ショップ価格登録システム、商品データベース構築等、創業時よりシステムの企画・開発・運用まで幅広く関わってきました。私がカカクコムに入社したのは、高校卒業後、まだ社長一人の会社だったときにアルバイトとして関わり始めたのがきっかけです。
現在は2007年から役員として、オークファンに関わるようになり、開発執行役員として仕事をさせて頂いています。「オークファン」は、「Yahoo!オークション」「モバオク」「楽天オークション」「アマゾン」「eBay」などの国内・海外の 主要オークション・ショッピングサイトの価格相場を一括で調べられる検索サイトです。中古品も含めた物の売買に関するバーティカルメディアとでも言えるのではないでしょうか?
私はこれまで上記のような仕事をしてきたために、「技術力とはなにか」という問いに関しては自分自身考える機会もありますし、同業者同士でそのような話しをすることもあります。
技術に限って話をすると、ネットサービスの開発において、「技術」と一言にいったとしても、フロントエンドのプログラミングスキル、UI・UXデザインスキル、インフラ運用技術、サーバーサイドのプログラミングスキルなど挙げればきりがないほど様々なスキルがあります。しかし私が考える技術力とは、一言で言うと、『思い描いたものを形にする力』に他なりません。
一つ例を挙げましょう。
ドラゴンクエストというゲームを思い浮かべて下さい。例えばもちろん魔法使いの人がいれば、自分でやる必要はないのですが、メンバーの中に魔法使いがいなければ、自分が魔法使いになれるような人こそ私は技術力のある人だと考えています。さらに私はネットサービスの開発において、開発に限らず、様々な体験をしたほうがいいのではないと考えています。それは、ネットサービスの利用者が欲しているものを理解するためには、その人と同じ体験をすることが近道だと思うからです。
また私が言うところの技術力は、極端かもしれませんが、本当に作りたいものさえ決めて、真摯に取り組むことができればつくものだと考えます。仮にデータマイニングに関する技術を突き詰めたい、並列処理に関する技術を突き詰めたいといった考えをもっている方であれば、アカデミックな世界において研究をしたほうがいいのかもしれません。
企業においてネットサービスを提供するにあたっては、研究と決定的に違うのは、企業であれば必ず収益化しなければならないという点です。市場にある必要性やニーズを汲み取り、サービスを形にする必要があります。また大変なのは、その必要性やニーズは変化していく点であり、その点も考慮しなくてはならないことに難しさがあります。
私はオークファンの開発、カカクコムの開発においても、常にユーザー目線に立ち続けてきました。具体的な例であげれば、プロバイダーの契約に際しては手数料をとるところもあるため、プロバイダー料だけでなく、そのプロバイダー契約の際に発生する手数料まで含めて、各プロバイダーごとにかかる金額を計算し、実質的にどこのプロバイダーが一番安くなるのかを比較情報として掲載するといったことをやっていました。ユーザー目線に立ってそういった情報を集めて、掲載することが大切だと考えたからです。
しかし、どんなネットサービスにも共通することですが、ユーザー目線に立つとなったときに、ネットサービスの運営においては非常に大きな苦難が伴います。それは何かというと、収益化をするという行為は、ユーザー目線と相反することになりがちである点です。
例えば、サイト内において口コミの一部だけが無料でみれて、口コミの全てを見るためにはユーザーはお金を払わないといけないとなった場合、それはユーザーにとっての利便性と相反してしまいます。ですので、収益化を考えることはもちろん大切ですが、そのネットサービス内に集まっている情報量が増えるまで我慢しなければなりません。この耐えるというのが難しいのです。カカクコムもオークファンもともに長い間耐えて、耐えて作ってきたサービスです。
オークファンのサービス開発における面白さは、カカクコムは新品の家電の販売価格を比較して表示しているのに対して、オークファンは、新品商品だけではなく各オークションに出品されている商品の価格、つまり中古(落札)価格をも含めて物の値段を算出している点にあります。
現在会社は、営業が6名、エンジニアが12名で、エンジニアは全体の従業員のうち3分の1を占めているので、比較的エンジニアが多い会社だと言えます。
エンジニアの卵となる最近の学生さんに期待することは、必要なものを自ら考え作るというユーザー視点をもち、達成すべき目的のために必要な技術を身に着け、あてはまる技術が存在しない場合は、自ら技術を作り出すことを当たり前とする考えを持つことです。
便利な技術は世の中に多数ありますが、その技術を使いこなすことでユーザー視点をもち、さらに便利な技術を作り作り上げることで、次の世代のさらなる進化に貢献できるのだと思います。