皆さんは「ソフトウェア」という言葉を耳にしたときに、何を想像されるでしょうか?PCやスマートフォンにインストールされているアプリケーションを想像される方が多いのではないでしょうか。
もちろん、それらも立派なソフトウェアです。ただ、世の中には皆さんが意識しないところにも様々なソフトウェアが活用されており、今やソフトウェアなしでは日常生活ができないといっても過言ではない状態となっています。
そこで今回は、ソフトウェア業界について国内外の現状と未来を考察します。
1. ソフトウェアとは何か
まず、ソフトウェアについてもう少し詳しくご説明いたします。簡単にいうとPCやスマートフォン等のようなハードウェアと呼ばれる機器上で、何らかの処理を動かすためのプログラムの総称を指します。
ただ、上記のようにソフトウェアといっても、その言葉の意味は広く様々なものを含みます。代表的な分類としては「システムソフトウェア」「アプリケーションソフトウェア」「組み込みソフトウェア」の3つです。
まず「システムソフトウェア」です。
「システムソフトウェア」は、PCやスマートフォンなどのようなハードウェア(システム)を動かすためのプログラムを指します。簡単にいうと「ハードウェア」と「ソフトウェア」の間を取り持つつなぎ役を行っているのが、システムソフトウェアです。
具体的には、Microsoft社のOSであるWindows、Apple社のiPhoneに搭載されているiOS、Google社のAndroidに搭載されているAndroid OSといったところをイメージしていただくと良いかと思います。
次に「アプリケーションソフトウェア」です。
こちらはおそらく皆さんが最も馴染みがあり、普段よくご利用されているものだと思います。「アプリケーションソフトウェア」は何らかの目的に対する処理を行うためのものです。文書関連の作成であればMicrosoft社のOfficeが有名です。パソコンでインターネットを見るためにはGoogle社のChromeを使用している方もいらっしゃると思います。スマートフォンでFacebookやInstagram、TwitterといったSNSのアプリを使っている方も多いでしょう。
このようにPCやスマートフォンなどの上で「何らかの目的」を達成するためのソフトウェアが「アプリケーションソフトウェア」なのです。
最後に「組み込みソフトウェア」についてです。
こちらは「システムソフトウェア」と少し似ていますが、「システムソフトウェア」がPCやスマホなどの汎用的な目的を持つ機器であることに対して、「組み込みソフトウェア」はある目的に特化したハードウェアを動かすためのプログラムを指します。
少しわかりにくいですがイメージしやすいものを挙げると、コンビニやスーパなどにあるPOSレジやATM、自動販売機、家電製品などに組み込まれたソフトウェアがこれに該当します。
2. 国内のソフトウェア業界
IT専門調査会社であるIDC Japan 株式会社が2017年12月に発表した報告によれば、2017年の国内ソフトウェア市場は約2兆8,367億4,500万円という巨大な市場を形成しており、前年比の成長率は約4.5%も伸びています。
アメリカの著名なソフトウェア開発者であるM・アンドリーセン氏は2011年にこのような言葉を残しています。
ソフトウェアが世界を飲み込んでいる
これは最近のIT業界におけるトレンドワードである「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を当時から予想していた言葉ということになりますが、あらゆる業界の企業がソフトウェアの開発・利用に乗り出し、ソフトウェア企業と非ソフトウェア企業の境目が極めて曖昧になっていくという現状をよく現している言葉です。
さらに日本有数のシンクタンクとして有名な野村総合研究所は2017年11月に発表したニュースリリースの中で以下のような見解を発表しています。
「Software is eating the world(ソフトウェアがすべてを飲み込んでいる)」の最終仕上げの状態にある
【出典】2023年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望
日本のソフトウェア業界は、海外に遅れをとっているのは紛れもない事実ではありますが、そのような状態の日本であってもソフトウェアが「すべて」を飲み込もうとしており、高い成長率を維持している姿がよくわかります。
次に国内のソフトウェア企業について見ていきましょう。売上TOP3は以下となっています。
1位:日本オラクル
2位:トレンドマイクロ
3位:オービック
日本オラクルはデータベースソフト、トレンドマイクロはウイルス対策ソフト、オービックはERPソフトという強い自社製品が売上を牽引しています。また、今回はランキングの抽出対象外としていますが、国内SIer企業も軒並み高い成長を続けています。
これはデジタルトランスフォーメーション、Fintech、IoT、AIといった社会を変えうるテクノロジーの台頭により、様々な分野の企業がソフトウェアの重要性に気づき、積極的なIT投資を行った結果といえるでしょう。こういった状況を総合的に考えても、国内のソフトウェア業界は、海外に対しては遅れを取りつつも、国内需要は決して低くない状態だと言えます。
※ 日経新聞の企業一覧にて「システム・ソフトウェア」に該当する企業、かつ売上に対して自社製品が占める割合が高いと思われる企業を独断でピックアップしております。
3. 海外のソフトウェア業界
さて、次は海外に目を向けてみましょう。総務省の発表によると、2017年のソフトウェア業界に関する市場規模は約3,910億ドル(約42兆円)とのことです。
成長率についても高い数字を維持しており、好調な様子が伺えます。この10数年でソフトウェア企業などの台頭により世界的な有力企業もガラリと様変わりしました。
その中でも「FANG」と「MANT」と呼ばれる企業についてはぜひ押さえておきましょう。これらは元々株式関連界隈から有力テクノロジー銘柄を表現したものとなります。
具体的には「FANG」とは、以下の企業の頭文字から創作された造語です。
F…Facebook
A…Amazon
N…Netflix
G…Google(Alphabet)
また、「MANT」は以下の通りです。
M…Microsoft
A…Apple
N…Nvidia
T…Tesra
いずれもSNS、クラウドサービス、動画配信などといったソフトウェアを中心とするテクノロジー企業ばかりであり、これらの会社の業績が下がるとアメリカの株式市場にも極めて深刻な景気悪化となる可能性があるとまで言われています。アメリカの景気動向は世界の経済と直結しているため、これらの企業は世界への影響度もかなり高いものといえます。
4. 今後のソフトウェア業界
それでは、今後のソフトウェア業界はどのようになっていくのでしょうか。
近年のIT業界では、クラウド、AI、IoTといった最先端の技術が普及し、コモディティ化しつつあります。今後もこれらの技術要素を活用し、デジタルトランスフォーメーションがますます進み、どのような業界であってもソフトウェアを利活用することにより、既存のビジネスモデルを破壊し、再構築していくはずです。このような状況を鑑みても、ソフトウェア業界は今後も高い成長を続けていくものと思われます。
ただし、国内ソフトウェア業界については、注意すべき点があります。それは、日本が人口減社会に突入しているという点です。先進諸国の中でも日本の生産性の低さはたびたびニュースで取り上げられますが、今後は労働人口は急激に減少していきます。
ポジティブな視点でみると、そのような状態で生産性を上げるには、ソフトウェアを上手く業務に取り入れていく必要があります。これが上手く進めば、国内のソフトウェア業界は成長を続ける可能性は十二分にあるといえるでしょう。
一方ネガティブな見方をすることもできます。国内のあらゆる需要は今後人口減少とともに低下していくため、国内ソフトウェア業界も同じ状態となる可能性もあります。その場合、活路は海外に求めることになるでしょう。事実として、国内の大手SIerは海外への進出を積極的に推進しています。
1つ確実にいえることは、今後もソフトウェアは、世界にイノベーションをもたらし、支え、豊かにする存在でありつづけるということです。世界は最早、ソフトウェアという「無形」のモノなしでは成り立たない状態にまで到達しているのです。
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