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SESという言葉を聞いたことはありますか?
SESはIT業界における契約形態の一つですが、派遣や請負とはどう違うのか、明確に区別できる人は意外と少ないようです。
今回は、SE経験3年、SES営業5年の経験がある著者がITエンジニアの契約形態について解説していきます。
SESとは?
SESは「システム・エンジニアリング・サービス」の略でITエンジニアの労働力をお客様に提供する契約形態のことです。開発エンジニアでもネットワークエンジニアでも運用・保守の技術者もSESの対象になります。
自社に請負の仕事がある場合や、自社開発している製品があれば自社内で仕事をすることもありますが、中小のIT企業であれば、ほとんどが客先へ常駐して仕事を行うことになります。
IT業界は建築業界に似ています。大手のIT会社が大きなプロジェクトを受注する。エンジニアが足りないので、派遣やSES契約で外部発注する。受注した会社は、人が足りないのでさらに外部発注する…という構造になっています。
実際に働いているITエンジニアとクライアントの間には何社も経由している、というケースもしばしば。ITエンジニアはプロジェクトが終わると他のプロジェクトへ参画する、という形で仕事をしていきます。
派遣とは違うの?契約形態の違い
客先に常駐して働くので派遣契約と似ていますが、内容は違います。
客先に常駐して働く労働形態には大きく分けて3種類あります。
請負契約、SES契約(準委任契約)、派遣契約です。
請負契約
請負契約はクライアントからの依頼でシステム開発などを行い、その成果物に対してお金をもらいます。そのため、依頼主からの指揮・命令は受けません。何時間働こうが、あくまで成果物に対しての報酬なので完成するまでは1円ももらえない、という契約です。
SES契約
SES契約は、委任契約の一つです。委任契約には「委任」と「準委任」があり法律に関する仕事の場合は委任契約、それ以外は準委任契約になります。
ですので、SES契約は準委任契約になります。SESはIT業界に特化した準委任契約ということです。
SES契約は、労働力の提供に対価をもらうので製品の完成義務はありません。対価は時給や日給、月給という形で計算して受け取ります。派遣と似ていますが、依頼主からの指揮・命令がないのが大きな特徴です。
派遣契約
派遣契約は、SESと同様に労働力の提供になります。依頼主からの指揮命令を受けて仕事をします。平成27年に施工された派遣法の改定で、有期雇用の労働者の場合は同じ人が同じ現場で働けるのは最大で3年、という期限が設けられるようになりました。3年を超えて同じ現場で働く場合は、派遣元か派遣先で無期雇用の社員になる必要があります。
また、派遣契約を結ぶためには所属会社(派遣元会社)と派遣先会社が一般派遣の免許を取得している必要があります。
ITエンジニアが客先で仕事をする場合、多くはSES契約や派遣契約となります。客先常駐で働くITエンジニアは、会社に所属せずにフリーランスで活躍している方もいますが、プロジェクトによってはフリーランスの方の参画をNGとしている場合もあります。なぜなら、本人が逃げ出してしまったり、連絡がとれなくなってしまったりした場合にフォローしてくれる人がいないからです。
依頼主の立場から考えると企業に所属している社員の方が信頼できる、ということでしょう。
SESのメリット
SES契約で客先に常駐して働くことのメリットは何でしょうか。
まず、「様々な現場で働ける」という点が挙げられます。様々なプロジェクトに触れることで新しい技術が学べるだけでなくその現場の仕事の進め方、情報の共有の方法を学ぶことができます。
また、様々な人と出会えるのもメリットです。高度な技術や知識を持ったエンジニアと仕事をすることで刺激を受け、新しい知見を学べることはSESの魅力のひとつです。
SESのデメリット
SESのデメリットについて考えてみましょう。
SESは様々な現場に行けるのがメリットといいましたが、それがデメリットにもなります。現場が変わるので通勤時間や通勤経路が変わります。それがストレスに感じる人も少なくありません。自宅から遠い現場に行かなければならない場合もあります。
近い現場の方がうれしいでしょうが、会社から提示された常駐先を「嫌だ」とはなかなか言いづらいでしょう。正社員で雇用されている若い人ならなおさらです。
また、一緒に仕事をする人と相性が合わない、ということも考えられます。
仕事をする上で人間関係は重要なポイントです。一緒に働く人が嫌だったら仕事場に行くのが嫌になり、モチベーションもあがりません。
また、会社の都合でプロジェクトの変更を余儀なくされることもしばしばあります。自分としては最後までやり遂げたかったのに他のプロジェクトで人が足りないから進行中の仕事を外される、ということがあります。会社に所属しているなら仕方がないことですが「自分で仕事を選べない」ということもデメリットです。
会社側からみると、技術者を客先常駐で働かせることのデメリットは「帰属意識が希薄になる」ことです。毎日通っている現場の人たちと仲良くなり、他の会社に引き抜かれる、というケースもあります。
特に優秀なITエンジニアは需要が高いので、より報酬の高い会社へ転職できるのは本人にとっても都合のいい話です。実際に、客先常駐で働いている社員はそうでない社員に比べて離職率が高い、というデータもあります。
ITエンジニアを抱えている会社は、社員を客先に常駐させて仕事をさせる場合は注意が必要です。定期的に帰社させる日を設けたり、人事や営業担当者がこまめにITエンジニアをフォローしたりして、帰属意識を下げさせない工夫が必要です。
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まとめ
- SESとはITエンジニアの契約形態の一つ。客先で常駐して働く。
- 請負契約、SES契約、派遣契約の違い
- SES契約のメリット・デメリット
について説明しました。
ITエンジニアは自社でなく客先に常駐して働くことが多いので、はじめは不安に感じる人も多いでしょう。同じチームで働く人と積極的にコミュニケーションをとり、仲良くなることが大事です。
どうしても客先に常駐して働くのに抵抗がある方は、入社面接の際に自社内での仕事があるのかどうかをそれとなく聞いてみるものいいかもしれません。あなたの活躍を祈っています。
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