「IT業界は建設業界にソックリ」
と聞けば、驚く人も多いのではないでしょうか?
しかし本当です。IT業界は建設業界に似ています。一体、どういうことなのでしょうか?この記事ではSE3年、SES営業5年の経験を持つ著者が、IT業界の構造について解説いたします。
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IT業界は多重下請け構造
なぜ、IT業界は建設業界に似ているかというと、どちらも「多重下請け構造」だからです。
多重下請け構造とは、たとえばクライアントから仕事を受注したA社が自社だけでは人が足りずにB社へ発注するとします。すると、B社も人が足りないのでさらにC社へ発注する、という構造です。場合によっては7、8も下の会社の技術者が現場で仕事をしている、ということも珍しくありません。
建設業界も大手の建設会社が仕事を受注し、実際に建設現場で働いている人は何社も下の社員ということは普通にあります。大きな案件であればあるほど多くの人が必要になりますので、多重下請け構造は仕方のないことなのです。
商流の上の方の会社で働けば給与は高い?
多重下請け構造の場合、中間に入っている会社は受注した金額よりも安い値段で下請けの会社へ発注します。つまり、中間搾取をしているというわけです。
ということは、技術者は多重下請け構造の中で、元請けに近い会社(商流の上の方の会社)の社員であるほど給与が高いのでしょうか?一概には言えませんが、答えは「イエス」です。
会社の給与システムにもよりますが、売上が多ければそれだけ技術者に支払える給与も高くなるのは想像できるでしょう。そのため、優秀なエンジニアは現場で上位の会社の人間からヘッドハンティングされることも珍しくありません。
実際に私がいた会社のエンジニアも現場でスカウトされて引き抜かれてしまいました。あまり露骨にやると会社間の取引にも影響するので、通常は表向きは分からないように行います。技術者が突然、「辞めたい」と言うので話を聞いてみると現場でスカウトされた、とのことでした。
やっている仕事は変わらずに給与だけ上がるのであれば、転職したい気持ちもわかります。私の経験上、そういった場合は引き止めても転職の意思がくつがえることはありませんでした。
しかし、商流が上であればすべてが良い、というわけでもありません。私がみてきたケースでは、クライアントとの距離が近くなればなるほど、エンジニアに求めれる品質や納期のプレッシャーは強くなります。現場で下請けの技術者をコントロールしなければならないなどの仕事や責任も増え、心身ともに負担が大きくなるケースも多いようです。
フリーランスという生き方もあるが
多重下請け構造であればどこの会社に所属しているか、というのはあまり大きなポイントではないのかもしれません。そのためにITエンジニアはフリーランスで活躍している人も多いです。フリーランスであれば自分の裁量で仕事を選べますし、報酬の交渉も自分でできます。会社を経由しないので、その分高い報酬をもらうことも可能です。優秀なエンジニアであるほどフリーランスで動いているケースが多いですね。
しかし、現場によってはフリーランスのエンジニアはNGというところもあります。なぜなら、IT業界では技術者が仕事を投げ出して音信不通になることもしばしばあり、そうなった場合に対応してくれるところがないからです。
技術者が会社員であれば、所属している会社が代わりの技術者と差し替えたり、損害賠償などで対応したりすることもできます。しかし、技術者個人との契約だとそういったことができないので、フリーランスのエンジニアを嫌うクライアントも少なくありません。とくに、業務系の開発で官公庁に関わるシステムや、機密性の高いシステムではフリーランスのエンジニアを敬遠する傾向にあります。
多重下請け構造の実態と問題点
関わっている人たちに不満なければ、多重下請けも悪くありません。しかし、現実には多重下請け構造には問題もあります。
まず、エンジニアは自社ではなく客先へ常駐して働くことになるのですが、上位会社との契約形態には、いくつかのパターンがあります。
派遣契約であれば、派遣先から指揮命令を受けて仕事を行います。労働時間などの労務管理も個別派遣契約書の中でしっかり記載されているため、技術者は安心して働けます。
請負契約であれば指揮命令を受けずに製品の完成義務を果さなければなりません。
また、準委任契約という契約形態であれば製品完成義務はなく、指揮命令を受けることもありません。
しかし、実態は請負契約や準委任契約でも現場で指揮命令を受けることがあります。指揮命令を受けたほうがお互いにスムーズに仕事をできることも多いのですが、これがパワハラや残業の強制などになることもあるから問題です。
ハッキリとは言われなくても遠回しに残業を促されたり、休日出勤をさせられることもあります。私が知っている現場では、休日出勤しているのにタイムカードを押させないで働かせるという現場もありました。
忙しくなればなるほど指示系統や契約がうやむやになり、残業が100時間を超える、というような現場は今でもあります。IT業界も以前に比べればブラック企業やパワハラは少なくなりましたが、IT業界の労務環境の改善は、今後も必要だと思います。
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まとめ
IT業界が建設業界と似ている、という意味がおわかりいただけたでしょうか?ITや建設業界以外にも多重下請け構造の業界はあります。多重下請け構造自体が必ずしも悪い、というわけではありませんが、今回紹介したような問題点があるのは事実です。
IT業界は現場やクライアントによって、かなり文化が違います。会社員として働いていると、自分の好きな環境で働けるとは限りませんが、労務的に問題のあるような現場は早めに会社に相談した方がいいでしょう。頑張ってください。あなたの活躍を応援しています。
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